『勉強をしないといけない!』と思っていても、勉強を始められない生徒が多いです。
この記事では私の塾で行っている『とりあえず勉強を始める』ためにしていることを『心理学』と『脳の働き』を交えて解説していきます。
- 自習(勉強)を義務化
- 時間が来たら途中で終わらせる
この2つはモチベーションを高めて勉強をするために行う方法です。
学校の勉強ならこの2つで大丈夫です。
もっとモチベーションを高めるには次の2つを行います。
- 自分で目標を決める
- 自分の考えた方法で目標を達成する
しかし『勉強するくらいなら死んだほうがマシ』レベルの勉強嫌いの場合は逆効果になるので注意が必要です。
自習(勉強)を義務化
自習(勉強)を義務化するというのは、勉強をする気はないけど、やらないといけない、自習室に行かないといけないという状況を作ることです。
『勉強しなさい』という声掛けだけでは逆効果です。実際に勉強するしかない状況を作ってあげることが必要です。
このような強制や義務感から行動に移すモチベーション(動機)を『外発的動機づけ』と言います。
外発的動機づけとは義務、賞罰、強制などによってもたらされる動機づけである。内発的な動機づけに基づいた行動は行動そのものが目的であるが、外発的動機づけに基づいた行動は何らかの目的を達成するためのものである。たとえばテストで高得点を取るためにする勉強や、昇給を目指して仕事を頑張る場合などがそれにあたる。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』動機づけ より
- 言われたから勉強する
- 勉強しないと何か言われそうだから勉強する
- ご褒美があるから勉強する
このような状況は『自発的に勉強している』とはいいがたいです。ここから、『自尊心』や『期待にこたえたい』という思いを育てていくことが必要です。
『強制や義務感で勉強させるのは良くない』
という意見もありますが、勉強してほしい、頑張ってほしい場合は、とりあえず勉強を始めない限り自発的に勉強をすることは難しいです。
『朝、目が覚めたら自発的に勉強する人間になっていた』という非現実的な期待はしないで、段階を踏んで自発的に勉強できるように後押ししてあげましょう。
『外発的動機づけ』は自律性を高めていくと、行動(勉強)そのものが目的になる『内発的動機づけ』までレベルアップしていきます。
自習(勉強)している行動をほめる
何気ないひと言ですが、『ねぎらい』『ほめる』以外にも狙いがあります。
生徒が『勉強という行動』をすることで他の人がどう思うか、どう受け止めているかということを本人に感じさせることです。
このようなフィードバックによって少しずつ自尊心を成長させていきます。
『自分は勉強できないわけじゃない』『勉強くらいできる』・・・自尊心
『よろこんでるなら勉強も良いな』・・・相手の期待にこたえる
このような自尊心を守るため、相手の期待にこたえたいため行動(勉強)をするようになります。
義務感や強制で勉強するよりも自発的になっていますが、まだ他者が必要な段階です。
気をつけないといけない点は学校の点数に関しては何も言わないことです。
あくまでも勉強という行動に焦点を当てて話してあげると良いです。
時間が来たら途中で終わらせる
勉強に取り組み始めたばかりのころは、時間が来たら終わりにするようにしましょう。
よくキリの良いところまで頑張らせてしまいがちですが、いったん区切ってしまうことに意味があります。
勉強の時間以外にも潜在意識の中で勉強のことを考えさせることが目的です。
人の脳は途中で終わったことを潜在意識で気にしつづけます。それは無意識のうちに働くようになっています。
この仕組みを利用します。途中で勉強を終わらせることで無意識のうちに長い時間勉強のことを考えるようになります。そうすると少しずつ勉強に対する抵抗感が無くなっていきます。
テレビのCMなどでも、ヒット曲のサビの部分を流したりしますよね。
CM以外でもその曲を何度も聞いていると商品にも良い印象を持つようになります。
これを心理学では単純接触効果と言います。
勉強でもこの効果を狙っていきましょう。
自分から進んで勉強するようになるには
ここまでで2つの方法を解説しました。
- 自習(勉強)を義務化
- 時間が来たら途中で終わらせる
この2つを続けていくと、自習(勉強)そのものに価値を見出すようになっていきます。
ここまでくると、強制したり、義務化したり、ご褒美をあげたりする必要はありません。
逆効果になるときもあるので注意しましょう。
この2つの方法を使ったとき生徒がどのような心理になって価値を見出すのか細かく描写した記事があるので読んでみてください。ご褒美の注意点(アンダーマイニング効果)についても解説しています。
家で全く勉強しないから心配なんです 心配ですね。やる気になって勉強してほしいですね。 やる気を出させるにはどうしたらいいですか? やる気になってもらうには毎日勉強するのが一番です。 ???勉強をし[…]
さらにモチベーションを高めるには
前の章では勉強が義務に感じていた生徒が、勉強に価値を見つけて自分から取り組むまでを解説しました。
次の3つが高まることで自発的な勉強が期待できます。
- 自尊心
- 期待にこたえたい(関係性)
- (勉強に対して)好感度が高い
学校の勉強で成績を上げたい場合は、このモチベーションがあれば十分です。
しかし『勉強が好きだから』『勉強そのものが楽しいから』というモチベーションで勉強ができている生徒もいます。
これは『内発的動機づけ』といいます。
行動(勉強)そのものに好奇心や関心がある状態です。このモチベーションに到達するには自尊心、関係性以外にも自律性が必要になります。
自律性を高めるには次の2つの方法を行いましょう。
- 自分で目標を決める
- 自分の考えた方法で目標を達成する
自分で目標を決める
受験の場合は志望校を決めますが、本当に自分で目標を決められている生徒は少ないです。
多くの生徒は『自分の成績だったら』『説明会でいいと思った』のような感じで決めています。
自分で目標を決めるというのはスタート地点が違います。
自分がどんなことに価値を見出していて、その価値を実現するために頑張りたいと思えることが重要です。
- 『友だちと同じ学校に行きたい』
- 『部活を高校でも頑張りたい』
- 『もっとハイレベルな授業を受けたい』
友だちと一緒にいることが自分にとって一番大事なことであれば、友だちが決めた志望校に行って友だちと一緒にいることが目標になります。
たとえその志望校が自分の学力に合わなくてもです。
他にあげた目標も同じように、目標を決めるスタート地点は部活だったり授業内容だったりします。
自分の成績からスタートして目標を決める場合は、まず合格点や偏差値から考えてその範囲内で学校を選ぶことになります。
自分の目標を立てるには『自分が大事だと思えること=価値』が決まっている必要があります。
『自分が大事だと思えること』を決めることはとても大事です。参考記事を読んでみて考えてみましょう。
『自分が大事だと思えること』=価値の見つけ方を解説しています。
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自分の考えた方法で目標を達成する
志望校に合格するために塾や予備校に通う生徒も多いです。
『ここは合格率が高い予備校だから安心だ!』
教わった通りに勉強すれば良いと考えてしてしまうと自律性は高まりません。
志望校に合格するために学校や塾、予備校を利用するという考えが必要です。
- 『合格するにはどんな勉強をすれば良い?』
- 『合格するにはどんなスケジュールで進めれば良い?』
このように合格するために必要なことを自分で考え、足りないものを自分で調べて勉強することが必要です。
学校の先生や塾や予備校のアドバイスが必要ないということではありません。
『ここは合格率が高い予備校だから安心だ!』
このセリフの場合、予備校が与えてくれる情報に期待してしまっています。
そうではなく合格するために何が必要か考えたうえで、自分の意思で必要な情報を先生から引き出すことが自律性を高めるポイントです。
アドバイスと自分の考えを統合して勉強を進めることができれば、勉強そのものに楽しさ、喜び、満足が生まれるようになります。
なぜなら、自分の意思で目標を決め、自分の考えた方法で目標に向かって努力し、ゴールに近づく感覚を味わうことができるからです。
モチベーションの到達点は『内発的動機づけ』
『内発的動機づけ』は自分の内側から湧き起こるモチベーションです。
前の章で解説した次の2つを達成した段階です。
- 自分で目標を決める
- 自分の考えた方法で目標を達成する
『内発的動機づけ』は一番学習効果が高いと言われています。
ですが学校の勉強ではここまで高いモチベーションは必要ではないと思います。
100点満点がある課題なら、ある程度のモチベーションと工夫で十分だと思います。
しかし、『他人に生かされる人生』ではなく『自分の人生を生きる』という意味においては必要不可欠なモチベーションです。
勉強以外でもスポーツや趣味なんでも良いので『内発的動機づけ』まで到達できるようにしていきましょう。