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SL理論とは 4つのリーダーシップと教育

この記事ではリーダーシップ理論の一つSL理論を解説します
上司と部下の関係だけでなく、部活や教育、教師と生徒の関係でも有効な理論です

 

この記事でわかること

  • SL理論がわかります
  • SL理論を活用した教育がわかります

 

ブログを書いている人

  • 経営者を6年経験
  • サラリーマン時代に管理職経験を10年以上
  • 中小企業診断士という経営管理のプロフェッショナル

の私が、塾経営を6年間してみて、SL理論は教育現場でも活用されているが、認知が不十分ということに気づき、記事にしてみました。

  

SL理論とは

SL理論とは

SL理論とはポール・ハーシーとケン・ブランチャードが提唱したリーダーシップ理論の一つで、Situational(状況ごとの) Leadership(リーダーシップ)を省略してSL理論と言います。

リーダー(上司)はフォロワー(部下)の状況に応じてリーダーシップを変えなくてはならないという理論です。

状況ごとのリーダーシップの基本原則は、単一の「最良の」スタイルのリーダーシップは存在しないということです。効果的なリーダーシップはタスクに関連しており、最も成功しているリーダーは、リーダーシップのスタイルを、リードまたは影響を与えようとしている個人またはグループのパフォーマンスの準備(能力と意欲)に適合させるリーダーです。効果的なリーダーシップは、影響を受ける人やグループによってだけでなく、達成する必要のあるタスク、仕事、または機能によっても異なります

The fundamental principle of the situational leadership model is that there is no single “best” style of leadership. Effective leadership is task-relevant, and the most successful leaders are those who adapt their leadership style to the performance readiness (ability and willingness) of the individual or group they are attempting to lead or influence. Effective leadership varies, not only with the person or group that is being influenced, but it also depends on the task, job, or function that needs to be accomplished.

ウィキペディア(英)Situational leadership theory より

簡単に言うと、全員に平等に接している(単一のリーダーシップ型)リーダーよりも、フォロワーの能力や内面の成熟度によって接し方を変えているリーダーが成功していて、

さらに、仕事の目標によってもリーダーシップのスタイルを変えていかなければならないということです。

フォロワーを自律的に行動できる人材に育てることがリーダーの役割になります。

なぜなら自律的に行動できる人を育てることで会社(組織)が成長できるからです。

 

SL理論が有名になったきっかけの本を紹介

SL理論を提唱したのはポール・ハーシーとケン・ブランチャードです。ブランチャードはアメリカで1分間シリーズという本を出版し大ヒットしました。

その中で1分間リーダーシップという本がSL理論を広めたと言われています。

この記事はケン・ブランチャードの書籍を参考に作成しています。

 

SL理論における部下の診断(4タイプ)

SL理論における部下の診断(4タイプ)

SL理論ではフォロワー(部下)のタイプを4つに分けています。

成熟度が低い順に、S1~S4の4タイプに分かれます。

  1.  S1 指示型 (成熟度が一番低い)
  2.  S2 コーチ型
  3.  S3 支援型
  4.  S4 委任型 (成熟度が一番高い)

リーダーはフォロワーを4つのタイプで診断して、タイプごとにフォロワーへの接し方を変えていきます。

リーダーはフォロワーの成熟度ごとに次の2つの接し方を組み合わせます。

  • 指示的行動
  • 援助的行動

 

指示的行動は仕事を正確に行うことを目的に指導します。

いつまでに何をどのように行うか、リーダーが具体的な仕事の指示をフォロワーに与えます。

 

援助的行動は自分で考えて動くことを目的に指導します。 

モチベーションを高めるために褒めたり、フォロワーの考えを聞いたりします。

自律的に行動できるようにするために、コミュニケーションを通じて仕事の目的を共有し、組織の問題解決や意思決定への参画を促すなど、高度な指導を行います。

 

S1 指示型 

指示的行動 多 援助的行動 少

リーダーは目標の設定から業務遂行の具体的内容まで指示し、常にチェックします。

入社したばかりの新人が当てはまります。業界知識、業務経験等、仕事に関するスキルが乏しく、リーダーが手取り足取り細かく指導していく必要があります。(指示的行動)

やる気を高める以前に、目の前の仕事にとにかく慣れてもらうことが目的です。

 

S2 コーチ型

指示的行動 多 援助的行動 多

仕事に慣れてくるとS2コーチ型の対応が必要になります。

目標の設定はリーダーが行います。フォロワーに対する仕事の指示を減らしていきますが、質問があれば答えて進めていきます。(指示的行動)

リーダーはフォロワーに対して指示を出されれば仕事を完遂できるレベルへと指導していきます。

フォロワーのモチベーションを上げるためにリーダーはフォロワーとコミュニケーションをとります。(援助的行動)

リーダーとフォロワーはコミュニケーションを通じてその仕事が組織にとってどんな目的があるか共有します。またリーダーはフォロワーを注意深く観察し、小まめなフィードバックと議論によって成長を促します。

 

S3 支援型

指示的行動 少 援助的行動 多

フォロワーは仕事を完遂する能力を持っていますが、まだ一人ですべて行う自信が無い状態です。

そのためリーダーは援助的行動をメインに行い、指示的行動は必要ありません。

リーダーは、社員が自ら進んで仕事を完遂したいか議論し、社員がチャレンジしやすいように援助する必要があります。

 

S4 委任型 

指示的行動 少 援助的行動 少

社員は自信とモチベーションを持って自ら仕事に取り組み、それなりの結果を出せようになっています

そのためリーダーはフォロワーに干渉せず、大きな目標を提示するにとどめ、結果の報告を求めます。

フォロワーは与えられた大きな目標に対して、その目標の意義を考え、自分で工夫しながら自分の責任のもと仕事を進めていきます。

 

以上4つのステージを紹介しました。

ベテランだからS4、若手だからS1というものではないです。個人個人の仕事の習熟度や、内面の成熟度でベテランなのにS2だったり、若手なのにS4ということもあり得ます。

リーダーはフォロワーがどのステージにいるか診断してタイプごとに接していきましょう。フォロワーの立場なら自分がどの位置なのかを自己分析してみましょう。

 

SL理論をスポーツで利用した例

SL理論をスポーツで利用した例

SL理論は企業の組織論で活用されていますが、リーダー(上司)はフォロワー(部下)を自律的に行動できるように導いていくことに本質があります。

そして組織に属する個人個人が自律的に行動できるようになれば、組織の生産性も上がるため、有効なリーダーシップ理論として採用されています。

このSL理論をチームスポーツでも使えないかということで部活や、スポーツクラブで活用する事例もあります。

上司と部下の関係ではなく、コーチと選手の関係、部活の顧問と生徒の関係でもSL理論を活用して自分で考えて行動できるように指導しようという試みです。

 

SL理論を教育現場で活用する時に注意すること

SL理論を教育現場で活用する時に注意すること

スポーツでSL理論を利用しているのと同様に、コミュニケーションを通じて『自律的に行動できる』ことを目指す教育は大事です。

自律的に行動できる生徒の方が成績が良い傾向にあります。

そして学年が上がるごとに自律的に行動できる重要性は上がっていきます。

大学生にもなると、自律的に行動できない人は高い授業料を捨てているようなものになってしまいます。なぜなら自分で何を学ぶか決めて自律的に行動しないと誰も何も教えてくれないからです。

反対に、大学で何を学ぶか決めて行動できる人は、いろいろな人が協力してくれます。高い授業料に見合った学びを得ることができるでしょう。

しかし、高校3年生の時点でS2の人が大学生になったからと言って、S3やS4になることはありません。

『勉強する=先生に教えてもらう』

という考えの人はいつまでたってもS3、S4に行くことはできません。

勉強を教わっているということは、教師が指示的行動を多く行っているということです。

小中高と学年が上がるごとにS1からS4までに成長できるように教師や保護者が指導していくことが求められます。

 

平等を求めるとかえって成長を阻害する

義務教育、高校までは、みんな平等に教えないといけないという考えがあるので、次のような対応になります。

  • 全員に同じ課題を出す
  • 同じ接し方をする

ちょうど良い生徒もいれば、生徒によっては物足りなく感じたり、ある生徒は難しすぎるという状況に陥ります。

教師もそれがわかっているので、限られた時間の中でなるべく生徒ごとに対応を変えて接しようと頑張っている方も多いです。

習熟度や成熟度ごとに対応を変えるというのは次のようなことです。

  • 習熟度が足りない生徒にはなるべく多くの時間を使って手取り足取り教える。
  • 習熟度が高く、内面も成熟している生徒にはあまり口出しをせず方向性を示すだけにする。

しかし、生徒のためを思って教師が生徒にあわせた対応をしても、教わる生徒や、保護者がステージごとに接し方を変えていることを知らなければ、行き違いが起こります。

  • 『えこひいきしている』
  • 『ほったらかしにされている』 

そこで教師がすべきことは、生徒がどの段階にいるか、次は何を目指せば良いか、そのためにどういう接し方になるかを明確に提示してあげることです。

保護者は『えこひいきしている』『ほったらかしにされている』と感じたら、その対応にどんな意図があるのか教師に確認することが必要です。

教師と保護者は、平等に接してあげるというのは一見正しいように見えて、結果として不平等になってしまうということを知っていると良いです。

なぜなら子供一人一人の習熟度、成熟度は違って当然だからです。

とくに保護者は平等な対応を求めるというのは、子供の成長を阻害していると考えたほうが良いでしょう。

 

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