学校の勉強は必要なの?と子供に質問されたけどどう答えればいいの?
実際学校で習ったことなんて大人になってから使ってないし、私が言っても説得力なさそう
そんな疑問にお答えします。
答えは「勉強を通じて身につけた力が将来の財産になる」です。
ありきたりな答えですが、心理学用語のメタ認知的知識の観点から何を身につけると良いか説明していきます。
それを知ることで、現代の日本において学校で勉強することによって得るものについて知ることができます。
学校の勉強で教わる知識は仕事に直結するものは少ない事実
学校の勉強で教わる知識は仕事に直結するものは少ないです。
学校の勉強科目の全てが将来役に立つかといったらそうではないことは実感していると思います。
だから子供に勉強の意味を聞かれて言葉に詰まったり、話しても説得力がないと感じてしまうのです。
実際に学校で習うことが将来役に立たないということはいろいろな人が言っていますね。
有名な方なら元大阪市長の橋本徹さんは高校の数学で習う三角関数について言っています。
三角関数自体は、建築の仕事や製造の仕事などで図面を引くときに使います。
しかしサービス業の仕事では使う場面は、ほぼ無いです。
ちなみに現在日本でサービス業に従事している人は全労働者の8割に上ります。
つまりほとんどの人は高校で習った三角関数を使っていません。
戦後の復興期や高度経済成長期なら建築や製造の仕事がたくさんあり、学校で学ぶ知識が役に立ったと思います。
しかし、PCの普及や産業構造の変化によってほとんどの人が使わなくなりました。
いま学校で習っている知識もそのうち新しい技術によって陳腐化していくでしょう。
つまり学校で習う知識を全てそのまま使うことはないと言って良いです。
大人になってからは仕事の知識を身につけていかないといけません。
仕事の知識として身近な例を挙げると、
飲食店ならメニューやレシピ、接客マニュアルだったり、
ホームセンターなら商品の値段や使い方、
管理部門なら法律と実務での運用方法などですよね。
ただここからが重要です。
仕事を覚えるのが早い人
仕事を覚えるのが早い人はいませんでしたか?
学校で習った知識を応用して覚えることができれば早いかもしれません。
それなら、いい大学を出た人は全て仕事を覚えるのが早いはずです。
しかしそうでもないですよね。
さらに言えば、覚えるのが早い人は仕事もスムーズにこなすことができていませんでしたか?
同じ学力でも早い人、遅い人、仕事のできる人、そうでない人に分かれるのはなぜでしょう。
実はここに学生時代の差がでます。
学校で覚えた知識の差がほとんど無いのに、なぜ学生時代の差なのでしょうか。
覚えるのが早い人は、レシピは丸暗記、接客マニュアルは実際に声に出してみたほうが覚えやすいなど、
自分が覚えていくためにどういう方法で覚えると効率が良いかを選択できるのです。
なぜ選択できるのでしょうか。
これは今までの勉強の体験から、自分の脳に、課題ごとにどのように覚えさせれば良いかを把握できているためです。
例えば接客マニュアルを覚えるには、実際に声を出して覚えたほうが早いのではないかと思える人は、
学生時代に、英単語を暗記するときに発音しながら覚えるシャドーイングをしていた経験からこのほうが覚えやすいと判断したかもしれません。
覚え方は教わっただけで身につくものではありません。
その覚え方を実践してみて効果を実感して、なぜこの覚え方が良いか、どんな場面なら効果的かがわかるようになるまで学習した成果なのです。
このように仕事を覚えることが早かったり、要領よく仕事ができたりする人はメタ認知的知識のレベルが高い人です。
そこで次の章ではメタ認知的知識について解説します。
勉強に必要なメタ認知的知識とは
メタ認知的知識には次の3つの要素があります。(三宮真智子著『メタ認知で〈学ぶ力〉を高める』より)
1.人間の認知特性についての知識
「人は一度にたくさんのことを覚えられない」のように、人はどのような特性があるかを知っていることです。
2.課題についての知識
「繰り上がりのある足し算は、繰り上がりのない足し算より間違えやすい」のような課題の特徴に対しての知識です。
3.課題解決の方略についての知識
「途中式の書き方」や「問題の解き方」などいわゆる学校や塾で教えていることです。
課題に対してどの方法をとればよいか選択し、工夫する知識です。
学校で習うのは主に3.課題解決の方略についての知識です。
覚えの早い人、仕事のできる人は 1.人間の認知特性についての知識、2.課題についての知識を知っているだけでなく、実体験したうえで身につけているのです。
学校でも教えてくれる先生はいます。
しかし、 人の内面の活動のメタ認知は「評価」が難しいのでテストや受験問題にはできないのが現状です。
メタ認知的知識 勉強面での具体例
ここでは具体的に
「暗算せずに途中式をきちんと書くと計算問題でミスが減るし早く解ける」
をメタ認知的知識を学ぶ観点から分解します。
1.人間の認知特性についての知識・・・人の特性についての知識
「暗算せずに」という部分から、「人が一度に覚えていられる短期記憶は少ない」という認知特性を知ることができます。
またそれを理解していれば、学校の先生の授業を聞くだけでは、
ほとんど覚えられないことがわかり、ノートを取っておくという必要性も理解できます。
人間としての特性を知ることができれば、
「ほかの人にできるのだから自分にもできるはず」
というポジティブな考えを持つこともできるようになります。
2.課題についての知識・・・課題の性質を知る
課題(問題)の性質や本質に対する知識です。
「途中式をきちんと書く」という部分は「かっこの中を先に計算する」や「かけ算を先に計算してからたし算を計算する」などのルールを間違えないために書くことです。
計算問題というのは「計算のルールを知っているか」を聞いています。
これが計算問題の本質です。
本質を知っていれば、その問題の計算ルールは何かを見つけてそこだけに気を付ければミスなく必ず正解できます。
勉強をするときは、「問題の本質」は何か、「何を聞いているのか」を考えながら勉強することで、本質から考える思考が身につくようになります。
3.課題解決の方略についての知識・・・課題を解決する方法
「途中式の書き方」や「問題の解き方」などいわゆる学校や塾で教えていることです。
多くの学校の先生や塾ではこの課題解決方法を教えて、あとは問題をとにかく解いて身につける方法で指導します。
しかし、暗算ではミスが出ることや、そもそも計算問題は何を問うているかを知らないと、途中式を書くことに負担を感じてしまいます。
つまり、課題解決方法だけを教わっても、そのおおもとにある「人の特性」や「課題の性質」を理解していないと使いこなせないのです。
逆に「人の特性」や「課題の本質」を理解していれば、学校で勉強した際に使った覚え方を工夫して使いこなし、新しい知識をどんどん覚えていくことができるようになります。
学校で教わる勉強内容が必要なのか疑問に思うのは、3.課題解決の方略についての知識だけでは大人になったときに役に立たないという認識です。そしてそれはその通りです。
しかしその課題解決方法のおおもとにある、人や自分の認知についての性質や限界を知り、課題の本質から考える思考法を学ぶことができれば、学校の勉強だけでなく、将来にわたって貴重な財産になります。