目標管理の手法で流行っているのがOKRという手法です。
人材管理や目標設定の手法はアメリカが開発し、成功事例が日本にも輸入される歴史があるので、OKRも導入企業が増えるだろうと予測されます。
ただ、成果主義やMBOのように、アメリカで成功したものをそのまま導入してもうまくいかないので日本式OKRになると思います。
- ストレッチゴール
- 成功率50%くらいの目標
OKRは導入企業がまだまだ少ない段階です。しかし中小企業診断士からの視点、塾経営者として教育に携わった視点から、OKRに必要なこの2点が日本の多くの人にはなじまないというのが容易に想像できます。
OKRとは何か、OKRに必要なマインド、導入するために必要なことについて解説します。
OKRとは
OKRは目標管理方法の一つです。
『もしドラ』でおなじみのピータードラッガーが提唱したMBOという目標管理方法を、アメリカのインテル社が改良したものです。
その後google、faccebookなどのアメリカ・シリコンバレーの有名企業が導入し、日本にも輸入されました。フリマアプリでおなじみのメルカリが導入企業として有名です。
OKRの意味
OKRはObjectives and Key Resultsの頭文字をとったものです。
次のように訳されます。
- Objectives=目標
- Key Results=主要な結果
OKR設定の流れ
OKRが流行っている理由として会社、部門、個人の『O=目標』と『KR=主要な結果』が共有されることにあります。
組織全体のOKRを設定する際は、トップダウンだけでなく、ボトムアップからの提案を受け入れることで、全員の納得感を高めることが重要です。
『O=目標』のポイント
- 定性目標で数値を使わない
- 『続ける』『維持する』という言葉は使わない
- 具体的で明確なゴールを決める
- 目標は絞る(多くしない)
- 達成度が60~70%くらいの高い目標(ストレッチゴール)
さらなる高みを目指すために、『続ける』や『維持する』という言葉を使わずに、高い目標を設定し、組織全体の意識を向上させることが狙いです。
『KR=主要な結果』のポイント
- 計測可能な定量指標
- 『行動のみ』を掲げるのではなく『行動した結果』どうなるかを設定する
- 成功率50%くらいの懸命に頑張ればできるレベルの難易度にする
OKRの特徴
OKRの特徴は次の2つです。
- 納得感のある目標
- ストレッチゴールと難易度
この2つによって、モチベーションを高め生産性を上げていきます。
そしてこのようなOKRを継続することで、『ムーンショット目標』と呼ばれる実現が困難とされる目標を達成できるという考えがあります。
納得感のある目標
高い実績を上げるために全員が納得した目標を目指します。
OKR で重要なのはその透明性です。OKR を組織に導入するときは、OKR とは何か、なぜそれが有用か、そしてどのように使用するのかを明確にしましょう。納得した目標を目指すと、人は高い実績を上げられることが研究によりわかっています。そのため、全員が積極的に目標に関わることが重要です。
google re:Work 組織にOKRを導入する より
ストレッチゴールと難易度
目標を100%達成することを良しとせず、60~70%の達成度になるだろうと思われる高い目標を設定します。
難易度についても同様に、成功率50%程度の、できるかどうかは自分の頑張りにかかっている難易度を設定します。
こういった挑戦的な目標や難易度は各個人の必死の努力を生み、個人の大きな成長と会社の業績に寄与します。
OKRに必要なマインド
OKRを導入するにあたって、各個人に必要なマインドが2つあります。
- ストレッチゴールをモチベーションに変えるマインド
- 高い達成動機
ストレッチゴールをモチベーションに変えるマインドが必要
OKRで特徴的なのはストレッチゴールを設定することです。
ストレッチゴールというのは、達成不可能と思えるような少し高めの目標のことを言います。
ストレッチゴールは必ず達成するものではなく、60~70%の達成で成功ととらえます。
これは目標を高く設定すると、目標を達成できなかった場合でも、各個人が格段の進歩を遂げられるという考えのもとから生まれています。
この考え方に合わない人は、達成できそうもない目標を課されるという負の面ばかりに目が行ってしまい、モチベーションが下がります。
このような考え方が必要になってきます。
高い達成動機が必要
達成できる可能性が50%程度の難易度というのは、達成動機が高い人にとってもっともモチベーションの上がる数値と言われています。
反対に、達成動機の低い人にとっては、もっともモチベーションの下がる数値とも言われています。
つまり達成動機が低い人には全くやる気の起きない目標になってしまうということです。
このような考えが必要になってきます。
参考記事:達成動機
共通点は加点主義
- ストレッチゴールをモチベーションに変えるマインド
- 高い達成動機
この2つに共通するのは加点主義のマインドです。
反対にOKRがうまくいかない人は減点主義のマインドを持っています。
減点主義の根っこにあるのは、他者からの評価を気にすることです。
- 他の人からよく見られたい
- 他の人に注意されたくない
- 他の人から笑われたくない
- 普通の人よりうまくいきたい
- 普通の人と同じくらいで良い
他者の目を気にするあまり、『ミスなく到達できる』とわかるまで手をつけられなかったり、途中でやめてしまったりします。
自分の行った行動の『結果』と『他者の目』がリンクしてしまっている状態です。
OKRを導入するには
OKRをうまく導入するための方法は、実際に行動する一人一人のマインドを減点主義から加点主義に変えていくことです。
- ストレッチゴールをモチベーションに変えるマインド
- 高い達成動機
この2つをもっていないと、モチベーションが低く生産性も上がりません。
この2つは加点主義の考えが必要になってきます。
減点主義、加点主義は生まれながらの性質ではないです。家庭環境、課外活動や高校、大学、社会に出てからの出会い次第で変わっていきます。
海外は知りませんが、日本の教育で加点主義のマインドは育ちません。
なぜなら満点があり、満点から減点されないように頑張ることしかしていないからです。
テストもそうですし、受験もそうです。また、他者の目を気にするという点では、偏差値、平均点、たまに話題になる部活の連帯責任などがあげられます。
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しかし、減点主義で育ったからと言ってあきらめる必要はありません。
無意識のうちに、減点主義と加点主義をシチュエーションによって使い分けている人も多く存在します。
例えば恋愛に奥手な人は減点主義のパターンが多いですが、恋愛に奥手な人でも仕事は加点主義でバリバリ頑張る人もいます。
ですので教育面で減点主義にかたよりがちになってしまいますが、プライベートはともかく仕事面における減点主義をなおしていけば良いです。
フィードバックの仕方が重要
減点主義をなおすにはフィードバックが必要です。
おそらくOKRを導入するにあたってコンサルタントもこまめなフィードバックが必要というと思います。
何のためのフィードバックか目的をもって行わなければ意味がありません。ただ単に数値を追うだけの面談にしてはいけないということです。
マインドを変えるためのフィードバックが必要です。
減点主義から加点主義に変わっていくには次の2つが必要です。
- 他者の目から自分の成長に目を向ける
- 小さな成功体験を積み重ねる
他者の目から自分の成長に目を向ける
他者の目から自分の成長に目を向けさせるには、フィードバックする人(上司)の興味が、本人の成長にしか興味がないと感じさせることです。
他者の目が気になるようなら、他者の視線の先が自分の内面の成長だと思わせれば良いのです。
小さな成功体験を感じさせる
成功体験を感じさせることが、こまめにフィードバックしなさいと言われる点です。こまめにフィードバックする理由を明確にしておく必要があります。
目標を設定してそれを達成すればドーパミンという脳内物質が出ます。脳内麻薬と言われる物質で一度うまくいくともっと成功したいという動機になります。
OKRでストレッチゴールや難易度の高い結果を決めます。本人はやる気を失うかもしれませんが、達成に至るまでの道のりを細かく細かくゴールを設定して伴走してあげましょう。
小さな目標ごとにフィードバックを行い、ドーパミンを分泌させましょう。フィードバックは本人に成長を感じさせることが必要です。
ドーパミンで気を付ける点は少しずつ難易度を上げていかないといけない点です。同じような難易度の目標で細かく分けても途中でモチベーションが下がってしまいます。
関連記事:ドーパミン