2020年はコロナショックとも言うべき大きな変化があった年でした。
ウイズコロナ、アフターコロナなどの言葉もでてくるなど、時代の変わり目を感じます。
とはいえ、リモートワークやリモート学習は以前からありましたし、働き方改革などもコロナ以前から言われていたことです。むしろコロナを契機に一気に進んだとも言えます。
こういった時代の移り変わりのときは、戦略的に生きることができるかどうかで人生が大きく変わってしまいます。
しかし塾経営で教育に携わった経験から、今の教育では戦略的に生きることができる人は少ないと感じたので記事にしました。
高校までで習う科目で十分戦略的に生きることはできます。ズバリ社会科がメインですが、何を勉強すればよいかについても少し触れます。
この記事では次の3つを解説します。
- 戦略的に生きることについて
- 戦略的に生きた人の事例
- 戦略的に生きるために勉強すると良い科目
戦略とは
戦略というのは自分の持っている資源を効果的に使い目的を達成することです。
戦略という考え方は、紀元前500年頃の孫子の兵法のころからあります。
戦略は、国際政治や戦争の場面で使われてきましたが、現在は企業の経営戦略のように、国家以外でもさまざまな場面で使われています。
戦略とは次の3つで構成されています。
- 目的
- 資源
- 効果的に使う
戦略の要素① 目的
①目的というのは3ヶ月後どうなっていたいか、1年後どうなっていたいか、3年後どうなっていたいか、5年後10年後はどうなっていたいかといったものです。
戦略の要素② 資源
②資源というのは、次の3つです。
- 貯金や資産のような目に見えるもの
- 知識やスキル、友人知人とのつながりのような目には見えないもの
- 時間(全員が平等に持っている)
戦略の要素③ 効果的に使う
効果的に使うというのは、自分の持っている資源を、適切なタイミングと場所で使うことを言います。
効果的に自分の資源を使った人の事例をあとで解説します。
戦略なき人生は危険な時代
勉強というと、どうしても②資源の知識やスキルに目が行きがちです。もちろん使える資源が増えるほど取れる戦略の幅が広がります。
しかしその知識やスキルを活かす戦略がなければ、せっかく勉強した知識やスキルを十分に使えない状況になってしまいます。
知識やスキルなどの資源を使えなければ、最悪の場合食べていけなくなってしまいます。
人生の戦略が不要な時代は終わりました。
日本では、ここ30〜40年くらいは、スキル(実務経験)が重要で、人生の戦略はそれほど重要ではありませんでした。
なぜなら、終身雇用、年功序列、年金制度などの社会システムが人生の戦略を補ってくれたからです。
人生の戦略を考えなくても、良い大学に行って勉強して、良い企業に就職して頑張れば安定した人生を送れると信じられてきました。
しかしそのような時代は終わりました。現在は社会システムの再構築にむけた過渡期にあります。
参考記事:「終身雇用難しい」トヨタ社長発言でパンドラの箱開くか
新しい社会システムができるまでは、個人個人の人生の戦略の有無が重要になってきます。
社会システム再構築の過渡期の人物例
過渡期の人物例を2人あげます。
三菱グループの創始者である岩崎弥太郎と、総理大臣を勤めた池田勇人です。
岩崎弥太郎
彼は幕末から明治期に活躍した人物で、三菱グループの創始者です。
土佐藩の地下浪人の生まれでした。土佐藩の武士は上士という優遇された武士と、古来から土佐に住んでいる郷士や地下浪人に分かれていました。
幕藩体制がつづけば、岩崎弥太郎も上士の言うなりの差別された人生を送っていたはずです。しかし明治維新によって彼の人生は一変します。
明治維新により土佐藩そのものがなくなってしまったので、武士も上士も郷士もなくなってしまったのです。
そういった環境の変化を生かして、算術や商才に長けた岩崎弥太郎は財界で自分の持っている実力をいかんなく発揮します。
反対に、この時代の変化を感じ取れず武士としてしか生きることができなかった人々は生活に困窮します。
明治になっても生き方を変えることのできなかった武士のなかには、西南戦争を始めとした明治初期の士族の反乱で命を落としてしまう人々も多くいました。
池田勇人
池田勇人は現在の京都大学を卒業後、大蔵省(現在の財務省)に入省します。
当時から大蔵省の中枢は東大出身者が占めており、京大卒の池田勇人は出世コースから外れていました。
さらに不治の病と言われた病気にかかってしまい大蔵省を休職(のちに退職)します。
不治の病とされた病気が治り大蔵省に中途採用扱いで復職します。出世コースとは関係のない税制関連のポストでしたが、仕事を続けるうちに税の専門家として名が知られるようになります。
これらの出来事はすべて戦前のことでした。そして戦後に転機が訪れます。
日本が戦前の体制から生まれ変わるため、池田はGHQから呼び出され税制改革の協議を行うなど活躍しました。
出世コースとは縁のない池田でしたが、大蔵省の中枢を占めていた人々の公職追放などもあり、一足とびに大蔵省の事務方トップである大蔵次官に就任します。
当時の日本は戦前の体制から戦後の社会システムを再構築する過渡期でした。
当時の首相、吉田茂は新しい日本を作るには、戦前、軍部の言いなりになっていた既存の政治家よりも、実際に政策を遂行していた優秀な官僚を政治家にすることで強力に戦後復興を進めていきたいと考えていました。
そこに池田は参画します。官僚の事務方トップまで上り詰めた大蔵省をやめて、選挙に当選。政治家としての道を歩んでいきます。
吉田茂の右腕となり大蔵大臣として辣腕をふるいます。そして最終的には経済に強い総理大臣として日本の高度成長を実現します。
二人の共通点
二人の共通点は、岩崎なら算術や商才、池田なら税制や財政などの専門領域を時代の変革に合わせて存分に発揮したということです。
おそらく同等の知識やスキルを持った人は、ほかにもいたと思います。しかしこの二人は適切なタイミングと場所でその知識やスキルを使えたのです。
岩崎なら武士の存在そのものが無くなったとき財界へ進出し、池田なら戦前の体制がなくなったときに官僚から政治家に転身しました。
目的もあったと思われます。岩崎は地下浪人の生まれながら反骨精神があり立身出世を望んでいたと言われています。池田も出世コースから大きくハズレてしまったことを嘆くエピソードがあります。
つまり二人には知識やスキルという資源を、時代に合わせて効果的に使うことができたので目的を達成することができたという共通点があるのです。
反対に、戦略的に生きることができなかった人々は大変です。岩崎の例で士族の反乱を上げましたが、今まで通りの生活すらできない可能性すらあります。
戦略的に生きるために勉強するべき科目
このような人生の戦略をたてるためには情報の受け取り方と思考法が必要です。
この2つは高校までの社会科の内容によって学ぶことができます。
情報の受け取り方
岩崎弥太郎や池田勇人の事例でもあげましたが、時代の変わり目だから今までの考え方を変えたほうが良いと気づくには、情報の受け取り方が大事です。
土佐藩がなくなったときに、今までの常識が変わり、西洋のような国になると考えるか、それとも土佐藩から給料がもらえなくなるとしか考えられないかの違いです。
地理や歴史を学んで、日本や世界の過去から現在を俯瞰して見ることができれば、情報の受け取り方が多様化します。
政治経済で社会の仕組みを理解することも大事です。
以前、「給料14万円で日本終わってる」というような話題もありましたが、経済を学んでいれば、労働も商品の一つであり、商品は需要と供給で価格が決定すると受け取ることができます。
地理で学ぶと良いこと (後日記事にします)
歴史で学ぶと良いこと (後日記事にします)
政治経済で学ぶと良いこと (後日記事にします)
戦略を立てる思考
時代の変わり目というのは、今までの常識が通用しなくなることが多くなります。
つまり常識という正解がない状況なので自分で考える事が必要になります。
そのような状況では、既存の様々な要素から新しいことを見つけることが大事です。
そのためには帰納法や演繹法という考え方が必要になります。今風の言葉で言えば、具体と抽象です。
これらの思考法がどのように発展してきたかは高校なら倫理、大学なら哲学の範囲で学ぶことができます。
倫理(哲学)で学ぶと良いこと(後日記事にします)
学校や予備校の授業では学べない理由
社会科は地理、歴史、公民の分野を小学生のうちから学んでいきます。
小学生、中学生のあいだは、社会科という科目の中で地理、歴史、公民を学びます。
高校生になると、地理はそのままですが、歴史は日本史、世界史にわかれ、公民は現代社会、政治経済、倫理と細分化され、より詳しく学んでいきます。
これだけ長い期間、社会科を勉強していても、戦略を立てるための情報の受け取り方や思考法は教えてくれません。
子供には教えることができない
私も塾経営をしていましたが、本来教えたいことは踏み込んで教えることはできないし、考えてもらいたいことはこれじゃないんだよなと感じていました。
思想信条の自由がある以上、教育による考えの押し付けはできません。特に倫理は思想の歴史も含んでいるので無味乾燥なものになってしまいます。
日本史世界史についても同様に考えを押し付けることはできません。
ほかにも、学校の勉強というとどうしても、テストや受験の結果が重要で、暗記や資料の読み取りなど点数を取るための勉強になってしまいます。
学校などの教育機関が教えないのが悪いというよりも、子供は教育や大人の影響を受けてしまうという考えがある以上は仕方のないことなのです。
自分で責任を取れるようになってから学び直しをしよう
学校では教えてくれないのは仕方のないことですが、カンの良い生徒や良い人に巡り会えた人は学ぶことができています。
しかし、いつから学んでも遅くはありません。文系科目は役に立たない、社会科は暗記科目だという偏見をなくして勉強してみてください。
人生の戦略眼を鍛える教科書