とりあえず勉強することでやる気が出てくることは脳の物質と心理学の面からも説明できます。この記事では脳の物質の面からやる気について解説します。
心理学の面からの解説はこのページの最後にリンクを貼っておきますのであわせて読んでみて下さい。
作業興奮とは
作業興奮という言葉があります。
人は一度やり出すとどんどんやる気が出るというものです。
やる気が先か、行動が先かという話になったときに、まず行動せよという根拠として良く上げられます。
実際に塾で教えていても勉強する前からやる気に満ちている生徒というのは少ないです。それよりも勉強を始めて少しずつ集中して最終的には没頭していたという生徒が多いです。
経験則からもそうですし、まずは行動しよう!というマインドがとても大事と思います。
とはいえ、いきなりやろうとしても手につかなかったり、始めるまでに時間がかかる生徒もいます。
なぜそうなるか、作業興奮が起きる原理を理解することで、まず何を始めれば良いか説明します。
作業興奮はどのような原理でおきるか
作業興奮は脳内物質のドーパミンが引き起こしていると言われています。
ドーパミンは報酬系と呼ばれる脳内物質で、集中力や記憶力を高め、嬉しい楽しいなどの幸福感を感じます。
ドーパミン(英: dopamine)は、中枢神経系に存在する神経伝達物質で、アドレナリン、ノルアドレナリンの前駆体でもある。運動調節、ホルモン調節、快の感情、意欲、学習などに関わる。
中脳皮質系ドーパミン神経は、とくに前頭葉に分布するものが報酬系などに関与し、意欲、動機、学習などに重要な役割を担っていると言われている。新しい知識が長期記憶として貯蔵される際、ドーパミンなどの脳内化学物質が必要になる
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』ドーパミンより
このドーパミンを上手に分泌できれば、作業興奮の状態になり、やる気も出てくるということになります。
作業興奮に必要な脳の部位
このドーパミンは脳の側坐核というところが刺激されると分泌するようになっています。
側坐核(そくざかく、英: Nucleus accumbens, NAcc)は、前脳に存在する神経細胞の集団である。報酬、快感、嗜癖、恐怖などに重要な役割を果たす
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』側坐核より
側坐核への主な入力として、前頭前野、扁桃体、海馬からのものや、扁桃体基底外側核のドーパミン細胞から中脳辺縁系を経て入力するもの、視床の髄板内核、正中核からの入力がある
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』側坐核より
側坐核は海馬、扁桃体、前頭前野という脳の部位から情報を受け取ってドーパミンを分泌するか決めます。
海馬は記憶をつかさどり、扁桃体は海馬から記憶情報を受け取り快か不快かを判断します。
扁桃体は快である、安全であると判断をしたら側坐核にドーパミンを分泌するように指示を出します。
作業興奮に必要な要素
扁桃体が不快である、危険であると判断するとドーパミンが出ないので作業興奮が起きないことになります。
つまり扁桃体が不快である、危険であるという判断をしないようにすればよいのです。
具体的には次の3つの状態であれば扁桃体は安心してドーパミンを分泌させる指示を出してくれます。
- 経験したことがある
- 熟知している
- (未知のことでも)想像がつく
まず始めるには経験したことがあるか、熟知していて、実際にやってみてどうなるか見通しが立つことが必要になります。
行動したいことが、複雑だったり大変だったりすると、それを想像するだけで扁桃体は不快を感じます。そのため、より単純な行動が必要になります。
まとめると、作業興奮に必要な要素は次の2つです。
- 経験もしくは熟知していて見通しが立つもの
- 単純な行動
作業興奮になるための具体例
『勉強しよう』と漠然に思っても始めることができないのは、作業興奮の必要な要素のうち、単純な行動に当てはまらないからです。
そのため、『勉強しよう』という要素を実際のアクションごとに細かく分けていく必要があります。
勉強するには机に向かい、椅子に座って、教科書とノートを広げてから始めますよね。
- 机のある場所に行く
- 椅子に座る
- 教科書とノートを出す
というアクションを順番にやっていこうと決めて行動すれば良いです。
教科書とノートを出した後もいきなり難しいものをやろうとせず、簡単なものから始めて徐々に難しいものへと進めていくと良いです。
このように簡単な内容から始めて、少しずつ難しくしていくことが良い理由は、ドーパミンの性質のためです。
作業興奮が続かない場合がある
塾の自習室に行けば勉強できるけど家では勉強できないという話がよくあります。これは塾に行くという単純な行動がトリガーになって勉強するという行動につながっているだけのことなのです。
家でも同じように単純な行動をトリガーにすれば勉強を始めることができるのです。
しかし塾に行っても勉強に身が入らなかったり、家で勉強できたとしても集中できなかったりする場合があります。
それは作業興奮が続かないためです。作業興奮が続かないというのはドーパミンが途中で分泌をやめてしまっている状態です。
少しずつ難易度を上げて作業興奮を続けていく
ドーパミンは報酬系と呼ばれる脳内物質です。
報酬(快)が得られそうだと予感すると分泌されます。実際に報酬が得られた後にさらなる報酬を求めます。
報酬とは、『椅子に座ろう!』と目標を決めて実際に椅子に座ったら『できた!』と達成感を味わうことが報酬になります。
報酬を得ると次のアクション『教科書とノートを出す』もできるかもしれないと期待します。報酬の予感からまたドーパミンが分泌されます。
このように一つのアクションが成功すると次のアクションもできるかもと期待してドーパミンは分泌され続けるのです。
しかし、期待は少しずつ要求が上がっていきます。
そのため、いつまでも簡単なことをし続けてもドーパミンは分泌されなくなりますし、難しすぎるものをしようとしてもドーパミンは分泌されなくなります。
この匙加減は人それぞれなので、自分で自分の様子をモニタリングして、どのくらいの難易度と報酬を続ければ良いか体感で覚えていくしかないです。
そのためには、小さな目標を一つずつ設定してそれを達成していく計画を立てることが必要です。
ドーパミンを利用した勉強法として計画を立てるときに気をつけるポイントについて解説した記事も書いているので参考にしてみてください。
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とりあえず勉強すればやる気が出てくるのは脳の物質(ドーパミン)以外にも心理学の面からも説明できます。
心理面から解説した記事があるので読んでみてください。
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