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作業記憶(ワーキングメモリ)とは

  • 2020年9月2日
  • 2020年10月15日
  • 記憶
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この記事では作業記憶(ワーキングメモリ)について解説します
作業記憶(ワーキングメモリ)の能力が高いと地頭が良いとか、頭の回転が速いとか言われますが
作業記憶(ワーキングメモリ)とはどういう働きをするのか解説します。

作業記憶とは

作業記憶はワーキングメモリとも言い、短期記憶の一部と言われています。

ワーキングメモリ(Working Memory)とは認知心理学において、情報を一時的に保ちながら操作するための構造や過程を指す構成概念である。作業記憶、作動記憶とも呼ばれる。ワーキングメモリの構造や脳の関連部位を調べる研究が多数行われている。一般には、前頭皮質、頭頂皮質、前帯状皮質、および大脳基底核の一部がワーキングメモリに関与すると考えられている。

 フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』ワーキングメモリより

記憶とは言っていますが、実際は考えたり思ったりする場所です。

 

作業記憶と短期記憶の違い

短期記憶は一時的に記憶を保管する場所という意味で使われています。
作業記憶というのは、物事を考えるときに使う記憶を言います。

何か考え事をしたときには、考え事をしているときは覚えていますが、少し時間がたてば忘れてしまいますよね。覚えている時間が短いので短期記憶の一部と考えられています。

 

作業記憶がどのように使われているか実例

言葉だけでは伝わりづらいので例をあげます。
これから問題を出すので計算をしてみてください。正解不正解は関係ないのでどんどん計算してみてください。

53+45はいくつですか

その答えに×10をしてください

その答えに÷5をしてみましょう。

その答えに×3をしてみてください。(間違ってても大丈夫ですからきちんと計算してください)

 

 

 

さて質問です。
最初は何と何を足しましたか?(覚えていなくても普通です)

今計算しているときに、作業記憶を使っていたのです。

作業記憶というのは

  • 目や耳から入ってきた情報
  • すでに記憶されている情報

この2つを掛け合わせて考える場所です。
先ほどの計算の例なら、最初のたし算をしたときに文字の情報と、自分の記憶にあるたし算の情報を掛け合わせて答えを出したのです。
その答えをもとに次の計算、次の計算と進んでいくうえで、使わない情報(最初の計算の数)は忘れるようにできています。

すぐに忘れるので短期記憶の一部でもあるということです。
計算の例をあげたように、作業記憶は勉強にも密接に関係しています。
数学以外にも国語、理科、社会、英語に関係しています。

 

作業記憶の役割分担

作業記憶の役割分担はBaddeley & Hitchという心理学者が提唱したモデルが有名です。

  • 音韻ループ(言語と音声担当)
  • 視空間スケッチパッド(ビジュアル担当)
  • 中央実行系(処理担当)

この3つがそれぞれ役割を担い、先ほどの例のような計算をしたり、考え事をしたりします。

音韻ループ

音と言語を認識します。
例えば、音楽を聴いて歌詞の内容を理解するのは音という情報を言語情報に変換しているためです。
英語のリスニングなどもこの音韻ループが影響しています。

視空間スケッチパッド

リンゴ! といったら🍏の絵が思い浮かびますよね。
イメージを思い浮かべるビジュアル担当です。

リンゴという文字情報(音韻ループ)から、どんなイメージだっけと思い(中央実行系)、視空間スケッチパッドが長期記憶からリンゴのイメージ図を呼び出しました。

例えば理科の実験問題の図や、社会の写真や地形図などは視空間スケッチパッドをうまく利用することができれば勉強がはかどります。

この役割分担を利用した『二重符号化を利用した記憶法』という記事で解説しています

中央実行系

中央実行系は、音韻ループや視空間スケッチパッドとコンビを組んで、情報を処理するところです。

例えば視空間スケッチパッドが🍏のイメージ映像を長期記憶から引っ張ってきたら、中央実行系はこれ何?と音韻ループに問い合わせて、『りんご!』というように処理します。

勉強の内容以外にも作業記憶は利用されます。

  • 受験勉強を計画
  • 将来の進路について考える
  • 受験直前だから少し遊ぶのをやめよう

このように思ったりすることも作業記憶で使われる脳の領域で行います。

 

作業記憶で使われる脳部位

作業記憶で使われる脳部位

作業記憶は脳の前頭前野という部位が働きます。おでこの裏側にある部分です。

この部分は人を人たらしめる部分ともいわれ、感情や思考をつかさどる部分とされています。
前頭前皮質(ぜんとうぜんひしつ、英: prefrontal cortex、PFC)は、脳にある前頭葉の前側の領域で、一次運動野と前運動野の前に存在する。前頭連合野、前頭前野、前頭顆粒皮質とも呼ばれる。
この脳領域は複雑な認知行動の計画、人格の発現、適切な社会的行動の調節に関わっているとされている。この脳領域の基本的な活動は、自身の内的ゴールに従って、考えや行動を編成することにあると考えられる。
前頭前皮質による機能を表す最も典型的な用語として、実行機能 (executive function) がある。実行機能は対立する考えを区別する能力の他、現在の行動によってどのような未来の結果が生じるかを決定する能力、確定したゴールへの行動、成果の予測、行動に基づく期待、社会的な”コントロール” (もし行ってしまったら、社会的に容認できないような結果を引き起こすような衝動を抑制する能力)に関係している。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』前頭前皮質 より

作業記憶で使われる脳の部位は人間社会で生きていくうえでとても大事な機能を有しています。

  • ゴール(合格)に向かって考え行動する
  • 今の行動(勉強orサボる)がどんな結果になるか予測する
  • 予測から成果を期待し行動する
  • 衝動(サボりたい)を抑制する

これらは受験勉強でも行いますよね。
受験の計画の立て方については記事を書いているので読んでみてください。

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作業記憶の能力が低いとどうなるか

音韻ループと視空間スケッチパッドの能力が低いとどうなるか勉強での例をあげます

音韻ループの能力が低い

国語なら作文や読解問題が苦手です。
数学の文章問題も苦手です。
英語のリスニングも苦手です。
ディスカッション形式の授業も苦手です。


文字情報や、音声情報を理解し、処理する能力が低いためです。

視空間スケッチパッドの能力が低い

数学の図形問題(平面図形、立体図形)が苦手です。
美術で絵をかいたり、技術で組み立てを行ったりすることが苦手です。
サッカーなどのチームスポーツで敵味方がどこにいるのか把握するのが苦手です。


あてはまるものがあっても不安になることはありません。
作業記憶というのは年を重ねても鍛えることができます。
今できないからと言ってずっとできないわけではありません。

次の章で鍛え方を紹介します。


作業記憶を鍛える

作業記憶を鍛える

脳は子供の頃に鍛えないといけないイメージがありますが、作業記憶については年齢関係なく鍛えることができると言われています。

ですので、鍛えたいときに鍛えましょう。

鍛え方①作業記憶の領域を確保する

鍛えると言っても、作業記憶で使う領域は限られています。
短期記憶は7±2のカタマリしか扱うことができません。
勉強などのような思考になると、3~4つくらいしか処理できません。
そのため、3~4つの空いたスペースをフルに使える状態に保つようにしましょう。

方法①良い睡眠をとる

睡眠には、いらない情報を忘れる機能があります。どうでも良いことを作業記憶のテーブルの上に並べないようためにも、忘れるということを上手に利用しましょう。
良い睡眠の効果については『良い睡眠をしなければ勉強しても合格できない(かもしれない)』の記事で書いていますので読んでみてください。

 

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方法②紙に書く

何か考え事をしたとき作業記憶のテーブルに考えるために必要な記憶がのっています。うまく別のことに切り替えることができるなら良いですが、嫌なことがあったりしたらなかなか忘れられないこともありますよね。
そんな時は紙に書いて『もう終わり!』と言って書いた紙を捨てましょう。


そのことはもう考えないという儀式をすることで切り替える(作業記憶から排除する)ことができます。

方法③全力ダッシュ

全力ダッシュしているときは何も考えられないですよね。全力ダッシュはたとえですが、運動をすると体を動かすことに脳が集中するので作業記憶のテーブルもきれいになります。

 

鍛え方②作業記憶の処理能力を高める

作業記憶を鍛えるもう一つの方法は処理能力を高めるです。

ここでは方法を2つあげます

方法①N-back

N-backというゲームは作業記憶の能力が高まったというデータがあるゲームです。
メンタリストDaiGoさんもプロデュースしていますよね。
このゲームで気をつけたいことは、一瞬一瞬の判断でゲームをするということです。
ゲームをやっているとどうしても攻略したい気持ちになってヤマを張ったり攻略法を見つけようとしてしまいます。それでは効果が出なかったというデータも出ています。
純粋に一瞬一瞬の判断で操作しましょう。

 

方法②勉強する(運動しながら)

読書や計算を体を動かしながら行うと鍛えられると言われています。

例えば、部屋の中を歩き回りながら本を読んでみたり、腕立て伏せをしながら計算をしてみましょう。

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