- 子供がテストや成績の結果について話していたけど、この声掛けでよいのかな?
- 子供への声掛けは間違っていないと思うけど理論的な裏付けが欲しい
こんな疑問にお答えします。
この記事を読むことで
- 心理学の原因帰属理論というやる気につながる考え方を知ることができます。
- 原因帰属理論をもとにやる気が出なかった生徒の言葉について具体例を3つ紹介します。
何気ない一言でもやる気が出たり出なかったり大変な時期ですが、いくつかポイントを抑えておけば大丈夫です。
まず結論です。
この記事では『原因帰属理論』から、結果に対する原因の種類について解説します。
テストの結果に対して、
- 学力がない
- 勉強が嫌い
- 頑張ったけどダメだった
この3点はやる気を失ってしまいます。
この言葉を発したときの解決策について説明します。
『原因帰属理論』は結論から言うと努力を推奨する理論ですが気を付けないといけない点もあるのでそこにも触れます。
中学生の勉強をやる気にさせる原因帰属理論とは
心理学者のロッターとワイナーは、成功と失敗の原因を何に帰属させるのか8通りに分類した「原因帰属理論」を提唱しました。
原因帰属理論のマトリクス図
マトリクス図の解説をします。
- 内部要因・・・自分に原因があると考えます
- 外部要因・・・他者に原因があると考えます。
- 統制可能・・・自分でコントロールできるものが原因と考えます。
- 統制不可能・・・自分でコントロールできないものが原因と考えます。
- 安定的・・・日常の行動や毎日の積み重ねに原因があると考えます。
- 不安定的・・・テスト直前のことや突発的なことが原因と考えます。
普通の人は、自尊心を保護するために
- 成功の原因は内部要因
- 失敗の原因は外部要因
に帰属しやすいです。
外部要因や不安定的なものというのは自分でコントロールすることが難しいです。
外部要因や不安定的なものに原因を帰属しやすい人は自己効力感(やる気)が低くなる傾向にあります。
自己効力感は勉強のやる気にとても大事な要素です。
自己効力感についてはこのページを読んでください。
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原因帰属理論を勉強のやる気にあてはめます。
- 失敗の原因を、能力だと思うと勉強を続けたくない状態になります。
- 失敗の原因を、勉強不足だと思うと、自分のその後の頑張り次第で挽回できると思うようになります。
- 成功の原因を、日ごろの勉強や学力だと思うと、次も成功できるかもしれないと期待して勉強を続けていこうと思うようになります。
※2の勉強不足については注意が必要な場合もあります。次の章の具体例で解説します。
失敗した原因が統制不可能なこと(能力、課題の難しさ、気分、運)と考えてしまうのは良くないです。
さらに同じ失敗が続いてしまうと、無気力・無力感などの「学習性無力感」を生じてしまいます。
※学習性無力感とは
不快な状況から逃れようという行動すら行わなくなる状態を指します。
点数が低いという不快な状況を受け入れてしまい、そこから脱しようと努力できなくなってしまうことです。
学習性無力感に陥るのはとにかく避けないといけません。
勉強のやる気が起きなかった中学生の具体例
私が教えた生徒の中で注意すべき3パターンがありました。
これらはすべて言葉にして話してしまっていました。
言葉にするとそれが自分を縛るのでこの3つは言わないようにしましょう。
1.『学力がない』から理解できない
学力はいままでの学習の積み重ねです。
積み重ねというのは過去から現在にかけての努力の結果です。
過去は変えられないため、『学力がない』=現時点では統制不可能なものなのです。
解決策は
テストの日、受験の日に『学力がない』状態を避けるにはどうしたらよいか自問自答させてください。
答えを押し付けるのではなく自分で答えを出さないとやる気になりません。
自分で答えを出せたらそれを紙に書いて言葉にしましょう。
積み重ねの大きさや過去が変えられないことなどの普遍的な価値観について会話することも効果的です。
2.この子は『勉強が嫌い』なんです。(お母さん談)
『勉強が嫌い』は生まれ持っての能力ではないです。
嫌いになる何らかの原因があり、それが積み重ねられて現在があります。
お母さんのように子供が一番信頼している人が追認してしまっていることも問題です。
原因帰属がさらに強化されてしまうので認めてしまうのはやめましょう。
解決策は
勉強が好きな人だけがテストの結果が良いか考えさせましょう。
勉強の好き嫌いに関わらずうまくいく子、うまくいかない子がいます
- 自分だけが勉強が嫌いなわけではない
- 勉強が嫌いな人だけがうまくいかなかったわけではない
客観的にほかの人と自分を比べてみると良いです。
『勉強が嫌い』というのは成績が良くない原因にはあげられないことに気付いてくれます。
3.『頑張って勉強したのにうまくいかなかった』
前の章で、勉強不足を原因帰属にすると、 自分のその後の取り組み次第で挽回できると思うとあげましたが、注意すべきパターンもあります。
毎日勉強しても点数が上がらないとき、原因を自分の努力にしてしまうと努力をしても意味がないと感じてしまう場合があります。
それが続くと学習性無力感に陥ってしまいます。
学習性無力感に陥らないためには努力の内容について話してあげると良いです。
解決策は
勉強の内容について確認する必要があります。
文章問題が中心だったのに暗記ばかりしていたなど、テスト範囲に対応した勉強方法がとれていないはずです。
勉強不足ではなく、勉強の仕方に原因を求めていきましょう。
まとめ
子供がテストの結果について原因を話していたらよく聞いてあげてください。
学力や能力、問題の難易度、運などのコントロール不可能なものに原因を求めている場合はしっかり話し合ったほうが良いです。
うまくいったときの原因についても考えさせてあげると良いです。
日ごろの努力や自分の能力に原因があると考えていると、次も頑張ればうまくいくと思えるようになります。
この記事で紹介した原因帰属理論はワイナーが提唱した理論です。
ベルナルド・ワイナーはハイダーによる原因帰属を展開し、達成関連場面での成功・失敗の原因帰属理論を考察した。ワイナーは能力・努力・課題の難しさなどの成功・失敗の要因を内的-外的、安定-不安定、統制可能-不可能という3次元に整理し、原因帰属によって感情や将来の成功期待などの認知的側面や、課題に対する取り組む姿勢などの行動的特徴が影響を受けることを明らかにした。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』帰属理論