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カントから感性、悟性、理性を学ぶ

  • 2021年3月10日
  • 2021年3月10日
  • 社会科
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高校社会の倫理に登場する人物から論理的思考を学ぶことができます。

古代から哲学者と言われる人たちは、論理的思考によって本質について考えを深め、新しい発見をしてきました。

カント以前の哲学は2つの大きな流れがありました。

このページの主役のカントは、哲学者の中でも大物の一人です。

  • 経験論 実際に体験し、客観的に検証されたものから原理などの概念を獲得する
  • 合理論 人がもとから持っている知性を使って考えることで真理が探求できる

このような経験論と合理論を統合した人として知られています。

カントの哲学は奥深く全てを語ろうとすると大変です。そのためこの記事では、人がどのように物事を認識しているかについて解説していきます。 

 

感性と悟性

感性と悟性

カントは人が何かを認識するときに感性と悟性を使うと言っています。

感性は目や耳から入ってくる情報です。

悟性というのはその情報を意味づけする概念のことを言います

例えば、赤くて丸い物体を見たときに「リンゴだ!」と思いますよね。このとき感性と悟性が共同作業をしています。

  1. 感性で「赤くて丸いもの」を認識
  2. 悟性で「リンゴという果物」と認識

つまり一つの物事は、感性と悟性が揃うことで正確に認識することができるということです。

感性と悟性が揃わない例①

戦国時代の武将にスマホを見せても何に使うのかわからないですよね。「電話するものですよ」と教えても電話すらわからないはずです。これは感性でそこに四角いものが有ることはわかっても悟性で認識できていないため、「スマホだ」ということが認識できないのです。

感性と悟性が揃わない例②

UFOやツチノコなどは悟性(概念)として存在しています。UFOやツチノコの形はなんとなく想像できますよね。でも実際に感性で捉えることができなければ認識できません。

見たこともないものが概念として出来上がっていることもあるのです。

その原因は理性にあります。

理性

理性

理性とは、2つ以上の概念を関連付けて推測する事を言います。

しかし理性は先程述べたように、存在しないものでも概念を作り上げることができてしまいます。

理性は目に見えないものでも概念として作り上げる

UFOを例に解説します。

星がきれいだな〜 あれ?なんか星が動いてる!
空を見上げると星が動いていました。感性でとらえることはできますが、悟性では何かわからない状態になります。
あの動いている光は一体なんだろう?
このとき、理性は今までの知識を関連付けて、動いている光の正体の概念を作ろうとします。
あの光は宇宙船、UFOかもしれない!
思考した結果、UFOという結論にたどりつき、動いている光をUFOと認識することにしました。

UFOだと結論づけるための理性による思考(演繹)

UFOだと認識するために次のような思考をしたかもしれません。 

  • 惑星の年齢は10億年単位
  • 人類は数百万年の歴史
  • 宇宙の星は無数にある
  • 地球に似た星も多数ある
  • 地球人は月に到着した
  • 科学は進歩する
空に動いている光がある
  • 地球より古い惑星がある
  • 古い惑星の中に地球に似た惑星がある
  • 地球人より古い歴史を持った宇宙人もいる
  • 宇宙人は進歩した科学で遠くの地球までこれる
  • 動いている光は宇宙船UFOだ

このように理性で思考した結果、UFOという概念を作り上げました。そして悟性にフィードバックして空の動く光がUFOだと認識するのです。

このように実在しないものでも認識することできてしまうのです。

飛行機の窓や人工衛星の反射、目の病気、火球などいろいろな原因があることを知っていれば、空の光をもっとよく観察して勘違いを防ぐことができたでしょう。

認識が対象に従うのではなく、対象が認識に従う

認識が対象に従うのではなく、対象が認識に従う

これはカントの言葉ですが、目に見えたものが必ずしも真実ではなく、悟性というフィルターを通して認識しているということを言っています。

そして悟性は、先程あげた例のように思い込みや実在しないものも概念として取り込んでいる場合があります。

そのため実際にあるものを正確に認識したいときは、

経験論:実際に体験し、客観的に検証されたものから原理などの概念を獲得する

という立場から考えることが必要です。

先程のUFOの例なら、空に光るものは星以外に本当に無いのか検証する事が必要だったのです。

それでは全て経験論的に考えればよいかというとそうではありません。

目に見えて存在しないものを自分の理性で作り上げて考えることも大事なのです。

理性で考えることが重要な理由 

「お年寄り」が「電車」に乗ってきたときを例にあげます。

  • 「お年寄り」にたいして「足腰が弱い」「疲れやすい」という概念が紐付いている
  • 「電車」にたいして、「立ったままでいると疲れる」という概念が紐付いている

これらの概念を組み合わせた結果、「自分が席を譲るべきお年寄り」という認識になります。

でもそのお年寄りは、足腰が弱いわけでもなく、むしろ今後に向けて足腰を鍛えたいと思っている人かもしれません。

その可能性を考えていても席を譲ったほうが良いと結論を出して行動します。

なぜなら「席を譲ると喜んでくれるかもしれない」ですし、「良いこと」だからです。

良いこと、悪いこと、相手の気持などは目に見えるものではありません。自分自身の尺度に過ぎません。

自分自身の尺度は客観的に検証することはできません。 

つまり、道徳的なことや人の気持ちのように計ることができないこと

合理論:人がもとから持っている知性を使って考えることで真理が探求できる

という立場が必要になります。

理性をフル活用して考えることが重要なのです。 

 

まとめ

カントは人の認識は次の3つを使うと言っています

  • 感性・・・五感から得る情報
  • 悟性・・・概念、五感から得た情報と概念を組み合わせてそれが何か認識する
  • 理性・・・概念どうしを組み合わせて思考する

理性は様々な概念を組み合わせて思考することで、実在しないものでも考えることができてしまう。

実際に存在するものだけで間違いなく考えたいときは、自分の悟性が間違っていないか客観的に検証する必要がある

道徳的なこと、相手の気持のように、目に見えないもの、自分にしか計ることのできないものは理性によって深く思考する必要がある

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