先延ばし癖とは
先延ばしは誰でも経験したことがあると思います。しかしその先延ばしを何度も繰り返すことで、先延ばし癖がついてしまいます。
あなたが先延ばしをして期限ギリギリになってしまったり、間に合わなかったりしたら、周りの人は、あなたのことを先延ばしする人だと思うようになります。そうすると先延ばしされても良いように対応を変えてしまいます。
そうなるとあなたが先延ばしをしてもうまく回ってしまうので、また先延ばしする・・・どんどん負のスパイラルに陥ってしまいます。
先延ばし癖がついてしまうと、あなた個人の成長と健康にデメリットがあるので周りの人の迷惑とは関係なしに先延ばし癖を直しておくほうが良いです。
先延ばし癖のデメリット
先延ばし癖がついてしまうと次のようなデメリットがあります。
- 時間を失う
- 集中力を失う
- 成長の機会を失う
- 自己効力感を失う
- 健康を失う
一つずつ解説していきます。
時間を失う
大事なことを後回しにするということは、後回しにしてできた時間で重要ではないことに時間を使ってしまうということです。
時間は誰でも1日24時間しかありません。
本来は有意義に使えるはずだった時間を、重要ではないことに使ってしまいます。そして大事なことをギリギリに開始してしまったために、あとで楽しみにしていた予定もキャンセルになるリスクが発生します。
集中力を失う
『大事なことだからやらないといけないのに!』後回しにしても脳のどこかでこのように思ってしまいます。
人が集中できるのは、目の前にある一つのことだけです。
脳のどこかで大事なことが引っ掛かっているとその分集中力が低下します。
集中力が低下している状態で仕事や勉強をしても、満足のいく成果や結果を出すことはできません。
成長の機会を失う
満足のいく成果や結果が出せないとどうなるでしょうか?
課題を先延ばしにしてしまうと、期限ギリギリor間に合わない上に、完成度の低い成果しか出せないです。そんな人に大事なことは任せられないですよね。
勉強も同じです。まだ十分に理解していないと思われて、基礎の復習を繰り返すことになってしまいます。
先延ばししない人は高い集中力を発揮して、どんどん新しいことにチャレンジさせてもらえます。そしてその分成長することができているのです。
自己効力感を失う
自己効力感とは、結果を出すために必要な行動をとり、それでうまくいくという確信がある状態のことを言います。
先延ばしをしている人も、『もっと時間をかければもっと良くできたのに』と成果について反省します。
それが先延ばしをしたためだと思うと『なぜ自分は先延ばししてしまったのか』と自己嫌悪に陥ります。
それが積み重なると課題を出されても、うまくいかないかもしれないと思ってしまい行動に移せなくなるという悪循環に陥ります。
健康を失う
先延ばしをするということは、『大事なことだからやらないといけないのに!』と脳のどこかで意識し続けてしまうということは先に述べた通りです。
それがストレスとなりストレスは健康を蝕みます。
ビショップ大学の心理学者Fuschia Sirois教授によれば、先延ばしを続けると脳がストレスを感知し、コルチゾールという抑制ホルモンを大量分泌させます。つねに先延ばしを続けると、心臓への負担が高まり、肝臓に脂肪をため込むなど、死亡リスクを高めることがわかっています。
東洋経済ONLINE「すぐやる!」が習慣化する5つのアプローチ より
先延ばしが癖になってしまうと、健康面でもリスクがあるということです。
先延ばし癖の原因
先延ばし癖はタイプごとに原因があります。
次の3つのタイプがあります。
- 失敗が怖い(完璧主義)
- 課題が大きすぎる
- 時間感覚が無い
一つずつ解説していきます。
失敗が怖い(完璧主義)
次の例のような先延ばしは『完璧主義』が原因で先延ばししてしまっています。
- 新しいことにチャレンジするべきなのに、ついつい先延ばししてしまう。
- 片付けを先延ばしにしてしまう。
『完璧主義』は『高すぎる目標』と『他人の評価を気にする』という欠点があります。
完璧主義(かんぺきしゅぎ、英: Perfectionism)とは心理学においては、万全を期すために努力し、過度に高い目標基準を設定し、自分に厳しい自己評価を課し、他人からの評価を気にする性格を特徴とする人のこと 。定められた時間、限られた時間の内にて完璧な状態を目指す考え方や、精神状態のことである。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』完璧主義 より
トーマス・エジソンは、今までに一度も失敗をしたことがないと言っています。そして今までに2万回電球が光らないという発見をしたとも言っています。
つまり失敗というのは受け取りかた次第なのです。完璧主義の人は目標を高く設定し、その目標を達成しなければ失敗と考えてしまいます。なぜ目標を高くしてしまうかというと、他人の評価を気にしすぎてしまっているからです。
- 新しいチャレンジは知らないことへの挑戦なので失敗するかもしれない
- 部屋を片付けられないのは一度に全て片付けないといけない
と思ってしまうため後回しにしてしまうのです。
課題が大きすぎる
大事なことだから先にやらないと・・・
と思っていても何から手を付けて良いかわからない場合、原因は課題が大きすぎるからです。
課題が大きすぎると面倒に感じたり、つい他のことをしてしまいます。
面倒に感じる
例えばクレーム処理の場合
- お客様のクレーム対応をする
- クレームの原因を把握する
- クレームの原因から対策を考える
- 今度同様のクレームが起きないように周知する
クレーム処理と言ってもすることがたくさんあります。
例であげたように、することが明確な場合は一つずつ順を追っていけばよいので面倒だから先に延ばすということはないです。
しかし、何から取り掛かればよいかわからない、課題が一つにまとまってしまっている場合は、『なんかすごく面倒そうだ』となって後回しにしてしまいます。
先ほどのクレームの例なら、クレーム処理を経験したことがない人は、お客様のクレーム対応をするのが先かクレームの原因を把握するのが先かわからないのでどっちを先にやろうか考えている途中でだんだんと面倒に感じてしまうのです。
他のことをやってしまう
大事なことを後回しにして、部屋の掃除をしたりすることありませんか?
それはセルフハンディキャッピングと言います。
自らにハンディキャップを課すことで、たとえ失敗した時でも他のせいであると言い訳ができるようにして自尊心を守る。
獲得的セルフ・ハンディキャッピング
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』セルフ・ハンディキャッピングより
このうち、なじみ深いのが、試験前などにあえてゲームをしたり、突然に時間のかかる机や部屋の掃除や整理を始める、あるいは最優先で取り組むべき、期限付きの仕事や課題、作業の準備にわざわざ妨害になるようなことを始める行為で「獲得的セルフ・ハンディキャッピング」といい、自らハンディキャップを作り出してしまう現象である。自分の能力に自信がないとき、成績が悪かった場合、本当はできるのに、ハンディキャップがあったからできなかったんだと言い訳するために行う自己評価や自尊心を守るようにする自己防衛のための行為である。成功した時は、問題があったのにできたと自己の評価を高められる。
セルフハンディキャッピングは、無意識に起きてしまいます。言い訳するために意識的に部屋の掃除をしているわけではありません。
なぜ無意識に掃除をしてしまうのでしょうか?
それはやらなければいけないことに対して
- 何から手をつければよいかわからない
- 難しそう
- 大変そうだ
と考えてしまい、本来やらないといけないものを、やり遂げる自信が無くなってしまうからです。
時間感覚がない
『やる気になるまで時間がかかる』という人は時間感覚の無さが原因です。
『時間感覚が無い』というのは
- 取り組む課題を終わらせるのにどれくらいの時間がかかるか
- 時間をどのくらいかけるとどの程度の完成度になるか
具体的に〇日かかりそう、□時間かかりそうというように予測できないと、もう間に合わなくなった時点から開始してしまったりします。
いわゆる8月31日に宿題を頑張るタイプですね。
先延ばし癖の直し方
先延ばし癖を直すために原因ごとに対処しましょう。
『失敗が怖い(完璧主義)』の直し方
完璧主義の思考を直して行く必要があります。
完璧主義の2つの欠点は高すぎる目標と他人を気にすることです。
高すぎる目標は加点主義
他人の目を気にするは比較対象を自分にすることで直すことができます。
減点主義から加点主義へ
- 『ここまでしないといけないのに!』 減点主義
- 『ここまでできた』 加点主義
『しないといけない』ということを言わない、思わないようにしましょう。
すぐに行動したから『ここまでできた』自分は凄い!というように言葉に出して言い続けましょう。
声に出す、紙に書くのアウトプットまでするようにしましょう。
アウトプットすることで減点主義の思考を加点主義に上書きすることができます。
比較対象を他者から自分へ
比較対象を自分にするというのは、過去の自分と比較するということです。
- ○○さんより良い結果を出せた
- 平均年収が○○万円だけど私は□□万円だ
のように結果の比較や平均との比較は他者との比較です。
- 今日単語の暗記がんばったから、昨日より30個多く単語を知っている
- 今日机の上を片付けたから、昨日よりもきれいになった
行動したことと、行動した結果改善した内容を連動させるようにしましょう。
これも声に出したり、紙に書くなどアウトプットすることが必要です。
1日の終わりに成長日記を書くことがおすすめです。
『課題が大きすぎる』の直し方
課題が大きすぎる=何から手をつけて良いかわからない→難しく感じる
という状態です。
つまり初めに何をすれば良いか決めることで行動に移すことができます。
例えば勉強なら
今日中に教科書8ページ分をノートにまとめよう
ではなく
- まず椅子に座ろう
- 次に教科書と筆記用具をカバンから出そう
- ページごとの太字を書き出そう
- 太字の前後2〜3行をまとめよう
のように自分が何を初めに行うか決めます。
この際、最初のアクションはすぐに達成できるものにしましょう。
達成バイアスと言って、人は目先にある達成しやすいものから取り掛かる心理効果があります。
詳しくはリンク先に書いてあります。
勉強しようと思うけど気が進まない(スマホぽちー) 始めるまでに時間がかかる(スマホぽちー) どうしてもスマホいじっちゃう! こんな悩みにお答えします。 この記事を読むことで サッと始め[…]
小さな目標を達成することで、ドーパミンという脳内物質が出てやる気や集中力が上がりどんどん作業がはかどるようになります。
『ギリギリに始める』の直し方
時間感覚がない人は、自分が作業にかかる時間を計った経験が少ないです。
今日から、一つ一つの作業を進める時に時計を意識しながら、どのくらい時間がかかるか計測していきましょう。
- 勉強するなら視界に入るところに時計を置く
- パソコンで作業するならチラチラ画面の隅の時間を見る
1分1秒まで計測する必要はありません。
大体どのくらいかかるのか自分で気にしながら作業をしましょう。
時間感覚が掴めてきても、計画誤謬と言って計画の達成にかかる時間を実際よりも短めに見積もるバイアスが働きます。
時間を測ったからと言って楽観的にならず、少し余裕を持って行動を開始するようにしましょう。
計画誤謬とは、時間についての予測は将来のタスクを完了するために必要な時間を過小評価します。この現象は、同様の性質の過去のタスクの完了に、一般的に計画されているよりも長い時間がかかっているという個人の知識に関係なく発生することがあります。バイアスは、自分のタスクに関する予測のみに影響します。
The planning fallacy is a phenomenon in which predictions about how much time will be needed to complete a future task display an optimism bias and underestimate the time needed. This phenomenon sometimes occurs regardless of the individual’s knowledge that past tasks of a similar nature have taken longer to complete than generally planned.
ウィキペディア(英)Planning fallacy より
まとめ
先延ばしはクセになります
クセになるとデメリットが大きいです
デメリットは次の5つです。
- 時間を失う
- 集中力を失う
- 成長の機会を失う
- 自己効力感を失う
- 健康を失う
原因は次の3つです
- 完璧主義
- 課題が大きすぎる
- 時間感覚がない
直すには
- 完璧主義は加点主義と過去の自分と比べることで直しましょう。
- 課題が大きすぎる場合は、すぐに手をつけられるところまで課題を細分化することで行動に移しましょう。
- 時間感覚がない人は、こまめに時計を見る環境にして、自分の作業時間を測る意識を持ちましょう。