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演繹法を使った考え方

高校社会の倫理に登場する人物から論理的思考を学ぶことができます。

古代から哲学者と言われる人たちは、論理的思考によって本質について考えを深め、新しい発見をしてきました。

論理的思考のなかで代表的な思考法の一つに演繹法というものがあります。

演繹法は、アリストテレスが体系化し、その後ヨーロッパの学問の中心的思考法として長く使われてきました。

演繹法は現在でも普通に使われる思考法です。

この記事では演繹法の説明と注意点、思考の例について解説します。

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四原因説

※アリストテレスはこの記事で紹介しています

演繹法とは

演繹法とは

演繹法は一般論(法則やルール)と観察事項をつなげて考え、結論を導き出すものです。

有名なものは三段論法としてよく使われる次の推論です。

  1. 人はいつか死ぬ (一般論)
  2. ソクラテスは人だ (観察事項)
  3. ソクラテスはいつか死ぬだろう (導き出された結論)

 

一般論は、すでに証明されている法則や、ルールのように、もとから知っているものを当てはめます。

観察事項は、観察して発見したもの、現在起きていることなどを当てはめます。

一般論と観察事項が正しければ、結論は必然的に正しい答えが導き出されるようになるのが演繹法です。

 

演繹法で推測するのは具体的な「ことがら」

演繹法は一般論(法則やルール)と、観察事項(具体的に起きた出来事)から結論を出します。

その結論は具体的に起きそうな出来事であり、法則やルールを推測するものではありません。

法則やルールを推測するには、複数の観察事項から共通点を見つけ出して考える帰納法が必要です。

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帰納法を使った思考の例

演繹法の注意点

演繹法の注意点は次の2つです。

  • 結論の飛躍に注意する
  • 一般論や観察事項を間違えると結論も間違える

結論の飛躍に注意する

結論の飛躍に注意する

演繹法は一般論と観察事項から考える方法ですが、導き出される結論は「それはそうだろうね」というような内容になります。つまり一般論と観察事項の延長線上の結論しか出ないのです。

そのような「それはそうだろうね」という結論を積み重ねることが演繹法には必要です。

日本のことわざに風が吹けば桶屋が儲かるという言葉があります。これは演繹法を積み重ねた結果の結論を言っているのです。

  1. 土埃は目に入ると眼が見えなくなる事が多い (一般論)
  2. 今日は大風が吹いて土埃が舞った (観察事項)
  3. 目の見えない人が増えるだろう (導き出された結論)
  1. 目の見えない人は昔から三味線で生計を立てていた (一般論)
  2. 大風のせいで目の見えない人が増えた (観察事項)
  3. 三味線が売れるだろう (導き出された結論)
  1. 三味線は猫の皮を使う 猫はネズミをたべる (一般論)
  2. 三味線が売れるので猫をたくさん捕まえた (観察事項)
  3. ネズミが増えるだろう (導き出された結論)
  1. ネズミは桶をかじる (一般論)
  2. ネズミが増えて家にある桶をかじっている (観察事項)
  3. 桶屋が儲かるだろう (導き出された結論)

このように演繹法を積み重ねることで、予測する範囲が広がります。しかし、いきなり風が吹いたから、桶屋が儲かると言ってもつながりがわからないため説得力にかけてしまいます。

 

一般論や観察事項を間違えると結論も間違える

演繹法は必然的に正しい結論を出すことのできる思考法です。しかし結論を間違えるときがあります。

  • 使う一般論が違う
  • 観察事項に不足がある

前提が違うと結論も間違ったものになるので注意が必要です。

前提を間違ってしまったときの例を次の章で紹介します。

  

演繹法の代表例

演繹法の例

成功と失敗の代表例を紹介します。

成功例失敗例ともに「万有引力が正しいなら〇〇があるはずだ」と考えた結果です。

海王星の発見

「万有引力が正しいなら〇〇があるはずだ」という演繹法的な思考で発見されたもので有名なのは、海王星の発見です。

「いっさい天空を見ることもなく、『ペンの先』(計算のみ)でこの惑星を発見した」と言われる発見です。

この話は1781年に天王星を発見したことから始まります。発見してから65年後に天王星は公転軌道をほぼ1周しました。しかし天王星の軌道はニュートンの万有引力の法則で計算した結果と異なるものでした。

  1. 万有引力の法則 (一般論)
  2. 天王星の位置 (観察事項)
  3. 天王星の公転軌道 (導き出された結論)←違っていた

そこで天文学者らは、観察事項に不足があったと考えます。

天王星より外に未知の惑星があり、未知の惑星の引力が天王星の公転軌道に影響を及ぼしているのではないかと考えました。そして未知の惑星の位置を計算によって割り出そうとします。

  1. 万有引力の法則 (一般論)
  2. 天王星の公転軌道 (観察事項)
  3. 未知の惑星の位置 (導き出された結論)←海王星

このように海王星は、望遠鏡で発見する前に、計算によって惑星が有ると予測され、発見されました。

バルカン(仮説上の惑星)

19世紀に、計算のみで海王星の位置を予測し、実際にそこに海王星があったことから、万有引力では説明できない水星の軌道についても、未知の惑星があるとして、バルカンという惑星が有るはずだという仮説を立てました。

  1. 万有引力の法則 (一般論)
  2. 水星の公転軌道 (観察事項)
  3. 未知の惑星(バルカン)の位置 (導き出された結論)←見つからない

しかし20世紀に入ってもバルカンは観測できず、さらに、アインシュタイン一般相対性理論によって水星の軌道が説明できるようになったことから、バルカンという惑星は存在しないとされました。

  1. 一般相対性理論 (一般論)←万有引力の法則ではなかった
  2. 水星の位置 (観察事項)
  3. 水星の公転軌道 (導き出された結論)

  

演繹法の身近な例

演繹法の身近な例

前の章では天文学での演繹法の例を上げたので、この章ではもう少し身近な場面での使い方の例を上げていきます。

日常生活で無意識に使っている演繹法

日常生活でも演繹法は無意識のうちに使っています。

しかし一般論のところには、万有引力や相対性理論のような法則ではなく、自分が信じるものを当てはめて考えることが多いです。

例えば、青魚は記憶に良いとテレビで紹介されたのを見たらこのように考えます。

  1. 青魚は記憶が良くなるDHAが豊富に含まれる (一般論)←テレビで言ってた
  2. 子どもたちは青魚が好きだ (観察事項)
  3. 今日は青魚にしよう! (導き出された結論)

日常生活で演繹法を使うときは注意が必要

天文学や数学なら、すでに何度も証明されている法則を当てはめるので、ほぼ確実に結論は正しいものになります。

しかし上の例で上げた日常生活の場合は、テレビで言っていたことを一般論に当てはめて演繹法で考えています。

この場合、一般論の内容に注意を払う必要があります。

  • テレビ(You Tube)で言ってたから
  • 〇〇さんが言ってたから
のような場合は疑問に思うことが必要です。これを批判思考(クリティカルシンキング)といいます。
  • 繰り返しやっても同じ結果になるか
  • 誰がやっても同じ結果になるか
  • いつどこでやっても同じ結果になるか

このような点をクリアしているか考えてみて、テレビで言っていたことや他の人が言っていたことを信じることができれば、演繹法で考えてみると良いです。

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