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プラグマティズムとアブダクション

  • 2021年3月24日
  • 2021年3月26日
  • 社会科
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高校社会の倫理に登場する人物から論理的思考を学ぶことができます。

古代から哲学者と言われる人たちは、論理的思考によって本質について考えを深め、新しい発見をしてきました。

この記事で紹介するプラグマティズムは、アメリカ発の哲学であり、現在進行系で大きな影響をもたらしています。高校の倫理の時間でも習うのですが、テスト用の知識ではなく自身の考え方の一つとして身につけてほしいです。

私自身、高校のときにもっと深く学んで身につけておけば!と思ったのでこの記事にて解説します。

プラグマティズムとは

チャールズ・サンダース・パース

アリストテレスによって学問として体系化された哲学は、その後ヨーロッパでさらに発展していきました。

科学の発達によってアリストテレスの自然学とキリスト教の教義に基づいた世界観は再構築を余儀なくされ、イギリス経験論大陸合理論の葛藤の末、カントによって収束します。

そしてヨーロッパの哲学は、ヨーロッパの世界進出とともに世界に広がっていきます。

この記事で紹介するプラグマティズムは、アメリカの哲学者パースによって提唱されました。

プラクマティズムは20世紀初頭のアメリカの思想の主流となり、その影響は教育や市民社会にも大きな影響を与えました。

その影響は現代でも続いており、ビジネスにおいてはアブダクションや仮説と検証、問題解決などの用語は当たり前のように使われています。

プラグマ

プラグマティズムのプラグマとは「行動」や「行為」を表すギリシャ語です。

ヨーロッパの哲学では、考えることによって真理や観念などを探求していました。それに対してプラグマティズムは真理や観念の源泉は行動にあるとしました。

行動した結果を検証して真理や観念を探求しようとしました。

ヨーロッパ哲学
真理とはなにか?まず考えてみよう!
プラグマティズム
とりあえずやってみてその結果から真理を考えてみよう!

ヨーロッパの哲学では真理を考えることから始めるため、どうでもいい議論になってしまうことも多々ありました。しかし、19世紀のアメリカは東部から西部へ開拓を進めていく時代であり、どうでも良いことや細かいことよりもすぐに役立つ実用的な考え方が必要でした。

プラグマティズムは若い国アメリカのフロンティア精神に合致した考え方だったのです。

真理の有用性

プラグマティズムを広めたジェームズは、真理は有用(役に立つ)であるといいます。さらに有用(役に立つ)であれば真理であるとも行っています。

例えば神様がいるいないの議論はしません。神様を信じることで心が安らぐなら、その人にとって有用だから、その人が神様を信じる限り神様はいるという考え方です。

ヨーロッパでは神様がいるかいないか議論した場合、絶対的な真実を求めるため、いる、いないを証明するまで議論が終わりません。

プラグマティズムでは神様を信じている人にとっては有用だから神様はいるし、信じていない人は有用でないから神様はいないと考えます。つまり絶対的な真実は無いという考え方です。

このような絶対的な真実を否定し、場面や受け取り方などで真実が変わるという考えを相対主義といいます。

アブダクション

ウイリアムジェームス

それまでの哲学の世界は2つの思考法(推論)がありました。

  • 演繹法・・・一般論(法則や真理)と観察事項から、論理的に正しい結論を導く
  • 帰納法・・・複数の具体的な経験や観測の共通点から、蓋然性のある(高確率て正しい)結論を導く

プラグマティズムのパースは第3の思考法としてアブダクションを提唱しました。

アブダクションの特徴は結論から推測する思考法です。

子供におもちゃを買ってあげることを例にして3つの思考法を比べてみます。

  • 一般論 子供はおもちゃが好きだ
  • 観察事項 私は子供を喜ばせたい
  • 導き出される結論 私は子供におもちゃを買うだろう

   

  • 子供のAくんはおもちゃが好きだ
  • 子供のBさんはおもちゃが好きだ
  • 子供のCちゃんはおもちゃが好きだ

結論 子供は全員おもちゃが好きだろう だから私の子供にもおもちゃを買おう

 

  • 結果・・・子供を喜ばせたい
  • 仮説・・・子供はおもちゃを買ってもらうと喜ぶのでは?
  • 検証・・・私の子供におもちゃを買って喜ぶか確認しよう→子供は喜んだ
  • 新しい結論・・・子供を喜ばせたいなら、おもちゃを買ってあげることだ

演繹法、帰納法ともに「子供はおもちゃが好き」という一つの真理からおもちゃを買ってあげています。

アブダクションの場合は、まずおもちゃを買って本当に喜ぶかどうか検証します。喜んだら「子供を喜ばせたいときに限りおもちゃを買ってあげること」が真理になります。

アブダクションは結論が複数ある

演繹法、帰納法ともに真理は一つであるため、結論は必ず一つになります。

しかしプラグマティズムは相対主義のため真理が複数あってもおかしくはありません。

  • 結果・・・子供を喜ばせたい
  • 仮説・・・子供はお菓子を買ってもらうと喜ぶのでは?
  • 検証・・・私の子供にお菓子を買って喜ぶか確認しよう→子供は喜んだ
  • 新しい結論・・・子供を喜ばせたいなら、お菓子を買ってあげることだ

おもちゃでもお菓子でも、子供を喜ばせることに関して有用(役に立つ)であれば、どちらも真理であるということです。

演繹法 帰納法 アブダクションの思考の流れ

それぞれの思考の流れは図のようになります

が思考するための材料、が結論です。

アブダクションだけ結論が複数になることがわかります。

演繹法の流れ
帰納法の流れ

アブダクションを使う場面

ジョン・デューイ

演繹法、帰納法、アブダクションはどれも推論ですが、使える場面が異なります。

アブダクションは次のような三つの場面で使うことができます。

  • 答えがないといわれるもの
  • 結果が良ければよいもの
  • スピードが必要なもの

具体例

売上や利益を上げることなどは良い例です。

売上や利益を上げる絶対的な答え(真理)があるなら、みんな同じことをしてみんな大金持ちになりますよね。つまり絶対的な答えがないからみんな仕事を頑張っているわけです。

絶対的な答えはないですが、結果(売上や利益)を出す必要はありますよね。そのため結果が出そうだと思える仮説を立てて検証を行い、最も効果的な施策を実行しているのです。

売上を上げたいなら、客数を増やしても上がりますし、一人あたりの単価が上がっても売上は上がります。人や場面、状況によって、よりよい答えは異なってきます。

ベストな答えを出してから実行しようとすると時間がかかります。その間に状況が変わるかもしれません。とりあえずやってみてその結果から考えることで変化する状況に合わせたスピーディな対応ができるようになります。

 

アブダクションを使うときの心構え 

アブダクションを使うときの心構えは次の3つです。

  • 答えは2つ以上ないとおかしい
  • 失敗を恐れない
  • 優先順位

答えは2つ以上ないとおかしい

日本の学校教育では、あらかじめ答えが用意されたものを9年以上も学習します。答えが2つ以上あるという思考になりづらいです。

しかしアブダクションの場合は、答えが2つ以上見つからないほうがおかしいです。なぜなら仮説を多くあげて検証するほど、より有用な真理にたどりつくからです。

失敗を恐れない

たくさん検証する過程で仮説が間違っていることもあります。しかし間違いを失敗と考えて恐れてしまうのはダメです

エジソンはこう言っています。

エジソン
私は今まで一度も失敗したこと無いぞ!
エジソン
2万回くらい電球が光らない発見もしたけどね!

仮説が違っていたという発見ができたという考え方が重要です。間違いはではなく一歩前進です。

エジソンもアメリカ人ですよね。実はパースやジェームスと同時代の人なのです。似た考えをしているのは面白いですよね。

優先順位の意識

答えは2つ以上ありますが、より有用(役に立つ)な答えを求めていくことは大事です。

先ほど子供におもちゃとお菓子をあげると喜ぶという例をあげましたが、どちらのほうが喜ぶか(有用か)ということまで検証しないといけません。

優先順位をつけるところまでがアブダクションには必要です。あれも良いこれも良いで終わらせてはいけません。

まとめ

プラグマティズム

プラグマティズムはアメリカ発の哲学で現代にも影響を与えている

プラグマティズムのポイントは次の3つ

  • 行動した結果を検証して真理を探求する
  • 真理とは有用(役に立つ)なことであり、有用(役に立つ)なら真理でもある
  • 絶対的な真実を否定し、状況や場面によって真実は複数ある相対主義

アブダクション

演繹法、帰納法とは違う思考法

結果から仮説をたて検証する

  • 結果・・・子供を喜ばせたい
  • 仮説・・・子供はおもちゃを買ってもらうと喜ぶのでは?
  • 検証・・・私の子供におもちゃを買って喜ぶか確認しよう→子供は喜んだ
  • 新しい結論・・・子供を喜ばせたいなら、おもちゃを買ってあげることだ

アブダクションを使う場面は次の3つです

  • 答えがないといわれるもの
  • 結果が良ければよいもの
  • スピードが必要なもの

アブダクションを使う際の心構えは次の3つです

  • 答えは2つ以上ないとおかしい
  • 失敗を恐れない
  • 優先順位

 

このページで紹介した演繹法と帰納法についてはこちらをご覧ください

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