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理性主義と自分の意見の作り方

理性主義とは高校の倫理の授業でちょっとだけ出る言葉です。

受験では軽視されますが、けっこう大事な言葉なので解説します。

理性主義

理性主義というのはその名の通り理性を大事にしよう!という考え方です。

では理性とは何なのか?ということになります。

辞書的な意味は次のようになっています。

理性・・・物事の道理を考える能力。道理に従って判断したり行動したりする能力。

道理を考える」 「道理に従って」

道理がキーワードですよね。

道理というのは、「そうあるべきこと」や「正しい論理」という意味があります。

つまり、理性とは、あるべき正しい論理で考えて判断する能力のことを言い、

理性主義とは

目に見えたことなどの感覚に惑わされず、あるべき正しい論理で考え判断することを重視しよう

ということになります。

さて、これだけ言われると「そんなの当たり前だし、誰でもそう考えているでしょ」と思うでしょう。

そこで次の章では倫理で出てくる古代ギリシアの哲学者を例にあげます。

理性主義の始まり

理性主義の始まり

ヨーロッパの思想の源流は、古代ギリシアの哲学者たちまでさかのぼります。

理性主義も同様に古代ギリシアの哲学に源流を求めることができます。

タレスとミレトス学派

古代ギリシアで最初の哲学者と言われるタレスは「万物の根源は水」だと説きました。

タレスという人物は、天文学や数学などでも業績を残し、ギリシア七賢人に数えられる人物です。

※日食の日を予測したり、タレスの定理として円周角の定理を証明したりしています。

さて、そんなすごい人タレスですが、その根底には徹底した現場調査があります。

プラトンが伝える有名な逸話に、夜空を見上げ天文の観察に夢中になるあまり、溝(あるいは穴)に落ちてしまった、というものがある。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 タレスの逸話より

こんな逸話があるくらい、毎日たくさん観察し、それらを総合して「万物の根源は水」という命題にたどり着きました。

「万物の根源は水」とは

タレスは

「宇宙は何らかの一つの物質によって構成されているのではないか?」

という一元論から、その根源の物質は水ではないかと考えました。

小さな植物に水をやると成長し大きくなり、その植物を食べると人や動物が成長する

成長によって伸びたり、大きくなった部分というのは、水が変化したのではないかと考えました。

それから様々なものを調査してみると、やはり、おおもとをたどると水に行きつくことを確認し「万物の根源は水」と結論づけました。

タレスは弟子たちにも、現場調査を重視した自然哲学を教えていきました。

弟子たちはタレスの生まれ故郷の地名を取り、ミレトス学派イオニア学派)と呼ばれるようになりました。

ミレトス学派(イオニア学派)の人々はタレスと同じように万物の根源を探求していきました。

パルメニデスとエレア学派

ミレトス学派(イオニア学派)はトルコの西岸を中心に発展しましたが、古代ギリシアでは南イタリアでも哲学が発展しました。

ピタゴラスの定理で有名なピタゴラスから始まるピタゴラス学派や、この章で取り上げるエレア学派がありました。

このエレア学派の創始者であるパルメニデスという人物が、理性主義の始まりと見ることができます。

有るものは有る、有らぬものは有らぬ

パルメニデスは「有るものは有る、有らぬものは有らぬ」といいます。

これだけだと意味不明だと思うので、数式にして考えてみましょう。

有るもの(A)は(=)有る(A)、有らぬもの(B)は(=)有らぬ(B)

つまりA=A B=Bとなります。

例えば山は山ですし、川は川です。人は人ですし、物は物です。

何を当たり前なことを言っているんだと思うかもしれませんが、

このA=Aのことを同一律と言って、論理の中でも基本中の基本に位置づけられているものなのです。

同一律のような法則が理性(考えるための正しい論理)であり、

パルメニデスは理性によってのみ真実にたどりつけると言っています。

また、パルメニデスは感覚(視覚や嗅覚など)でとらえると、有るものが有らぬもの(A→B)に見えてしまうが、それは思い込みであると言っています。

ミレトスとエレアの意見対立

さてここで意見の対立が形成されます。

タレスから始まるミレトス学派(イオニア学派)は万物の根源の物質が変化して宇宙は作られていると言っています。

「万物の根源は水」の場合、水は植物になり、植物は人の体になり・・・という感じでしたよね。

水は植物、植物は人の体ではエレア学派は納得しませんよね

エレア学派の意見に従うなら、水は水ですし、植物は植物、人の体は人の体のはずです。

同一律という理性に照らし合わせると「万物の根源は水」というのは、思い込みであるということになります。

この意見の対立は現代の私たちなら答えを知っています。

水は根から吸い上げられ茎を通り、葉に行き、水と二酸化炭素と光で光合成を行って、光合成によって栄養が作られ植物は成長しているんですよね。

ですが、当時は紀元前500年くらいの時代です。光合成なんて知る方法すらありません。

水をやれば植物は成長することを体験として知っていても、光合成のシステムまで理解しているはずもなく、水が変化して植物になったと思ってしまっても仕方のないことでしょう。

実際に見たり体験して得た知見でも、理性に照らし合わせるとそれは思い込みなのかもしれないということなのです。

新しい考えの出現 四元素説と原子論

実際に見たり体験して得た知見が、理性の法則に反していました。だからそれは思い込みです。で終わってしまっては一歩も進みません。

理性だけでは実際に起きていることを説明できないからです。

そこで理性の法則に反しないうえ、実際に起きていることも説明できる新しい考えが必要になってきます。

エンペドクレスデモクリトスという人物は、パルメニデスの考えを受け入れた上で、A→Bに変化する現実を説明しています。

四元素説

エンペドクレスは四元素(土水火風)がくっついたり離れたりして、宇宙の様々な物ができているとしました。

植物に水をやったときに水の元素と土の元素が合体して植物に見えるようになったということです。

万物の根源が一つだけだと、A=Aとなってしまい宇宙は成り立ちませんが、4つの元素の組み合わせならもう少し多様性が出てきますよね。

そもそも宇宙の成り立ちを一元論で説明することが間違っていてるのであって、多元論なら宇宙の成り立ちを説明できるとしたのです。

この四元素説はアリストテレスに支持され、その後2000年にわたってヨーロッパの学問で使われていきます。

原子論

デモクリトスという人物は原子論を唱えました。

化学の教科書にも載っているので見たことがあるかもしれません。

理科で習う通り、現代科学では原子の組み合わせによって分子が作られそれが物質になっていますよね。その元になる考えは紀元前400年代に存在していました。

デモクリトスは水でもなんでも、あらゆるものは目に見えないくらい細かく分けることができ、それ以上分けることのできない最小の単位が原子であるとしました。その原子がくっついたり離れたりすることで様々なものは作られていると言ったのです。

原子論は16世紀以降、少しずつ支持を得るようになり、20世紀になって本格的に支持を集める現代科学の基礎となりました。

実際に見たり感じたりしたことを理性で考え、思い込みを乗り越えることで新しい考えを生み出すことができたのです。

理性主義を生かす

理性主義を生かす

前の章までの流れを覚えるだけでは、たんなるテスト勉強になってしまうので、理性主義から何を得て自分に生かしていくかを考える必要があります。

タレス→パルメニデス→エンペドクレス、デモクリトス の流れの役割を考えてみましょう。

  1. 意見を提唱→その意見に対する批判→批判意見も取り入れて新しい意見を作る
  2. 現実→論理→現実

①は意見の作り方 ②は現実と論理で見た場合です。

意見の作り方

意見の作り方は先ほども挙げた次の3つの手順を踏んでいきます。

  1. 意見を提唱
  2. その意見に対する批判
  3. 批判も取り入れて新しい意見を作る

自分の意見や考えに自信を持っている人とそうでない人がいます。

自信を持てない人は①か②で止まってしまっている人です。

自身を持てる人は③までたどり着いた人です。

なぜなら、一度は反対意見を乗り越えているからです。

自信を持っている人は仮に批判があったとしても、その反対意見があったのか!というように新しい発見を得ることができます。

反対に自身を持っていない人は、批判をされてもそこから新しい発見ができることに気づくことができません。ただ悪感情だけが残ってしまいます。

グループで意見を作っていくときも同じです。

反対意見を言える人言えない人、反対意見を思いついてもなかなか言い出せない人は、この3つの流れを覚えておくと良いです。

しかし反対意見だけ言って終わりも良くないです。③の反対意見を乗り越えた新しい考えを作ることがゴールだからです。

 

現実と論理

現実と論理というのは、現実世界と脳内世界の違いといってもいいです。

先程の意見の作り方の順番に現実と論理を当てはめてみましょう。

  1. 意見を提唱・・・現実から考える
  2. その意見に対する批判・・・論理で考える
  3. 批判も取り入れて新しい意見を作る・・・論理の批判も取り入れて現実を説明する

例を上げて解説します

地球温暖化が議論されていますよね。化石燃料の使用により大気中の温室効果ガス(例:二酸化炭素)が増えているのが原因とされています。

地球温暖化を防止するためにどうすればよいか意見を作ってみましょう。

Aくんは二酸化炭素が問題だと考え、人が呼吸をやめれば二酸化炭素が減ると言う意見を述べました。(あくまでもわかり易い例としての意見です!)

さてこの意見に対してBくんとCくんが次のように述べました

  • BくんはAくんへの批判として、人は呼吸をしないと死んでしまうから他の方法にしようと言いました。
  • CくんはAくんへの批判として、太陽光発電のほうが良いと言いました。

BくんはAくんの意見に対して、「人は呼吸をしないと死んでしまう」という法則に合わないから別の方が良いと言っています。

CくんはAくんの意見に対して、太陽光発電のほうが良いと言っています。

Cくんの場合、Aくんの意見の批判というよりも、自分の考えた意見を述べているに過ぎません。

もしかしたらBくんと同じように「人は呼吸をしないと死んでしまう」と考えた上で、その対案として太陽光発電のほうが良いと言っているかもしれませんが、それを言葉にしなければ他の人に伝わりません。

Bくんの意見に耳を傾けることで、二酸化炭素を減らす+人が死なないように というように条件が追加されていきます。

これがいわゆる建設的な話し合いとなります。

自分の意見を作るときも同様に、自分の中で自分の意見を理性を使って批判してみることで、よりたくさんの条件をクリアできる意見を作ることができるようになります。

たくさんの条件をクリアできる意見のほうが自信を持つことができますよね。

 

理性というと難しく聞こえるかもしれませんが、自分の知っている法則や理論に当てはめて自分の言葉を振り返ることが大事です。

 

高校の倫理に登場する人物たちから多くのことが学べます。

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